謎の犬科動物をテキサスで発見、絶滅危惧種の失われた遺伝子を持っていた

animals_plants 2018/12/28
Credit: Ron Wooten / Princeton University
Point
・テキサス州にあるガルベストン島で奇妙な見た目の犬科動物の集団を発見され、DNA解析がおこなわれる
・北米に生息する犬科動物との比較の結果、絶滅寸前のアメリカオオカミと多くの共通遺伝子を持っていた
・さらに、この犬科動物にのみ存在する遺伝子も見つかり、アメリカオオカミの失われた「幽霊対立遺伝子」だと思われる

アメリカテキサス州の隔離された島で、生物学者が犬科動物の奇妙な集団を発見しました。

この動物のDNAを調べたところ、なんと絶滅寸前のアメリカオオカミの遺伝子を持っていたことが判明。

さらに、保護されているアメリカオオカミでさえ持っていない「幽霊対立遺伝子」を持っていることが分かりました。研究は12月発行の「Genes」特別号で発表されています。

Rediscovery of Red Wolf Ghost Alleles in a Canid Population Along the American Gulf Coast
https://www.mdpi.com/2073-4425/9/12/618/htm

 

Credit: Ron Wooten / Princeton University

上の写真が、ガルベストン島に生息している謎の犬科動物。発見したのは野生生物学者のロン・ウーテン氏で、発見後、プリンストン大学の研究者に遺伝子テストの依頼をメールしました。

依頼を受けた環境生態学者のブリジット・フォンホルト氏は、「この手の依頼は日常的に受けますが、ウーテン氏のメールは少し違っていました。彼の熱意に心打たれると同時に、この犬科動物の写真には興味をそそられました。写真はとりわけ興味深く見えたので、詳しく調べる価値があると感じました」と述べています。

その直感は正しく、研究の成果が「Genes」特別号で掲載されることとなったのです。

Red Wolves at Point Defiance Zoo and Aquarium in Tacoma, WA on Wednesday, Sept. 1, 2010. (Photo/John Froschauer)

絶滅寸前のオオカミの亜種から未発見の遺伝子

アメリカオオカミはかつて、アメリカ南東部を闊歩していましたが、人の生活圏が拡大すると共に、生息域が変化しコヨーテと異種交雑がすすみました。

アメリカの絶滅危惧種リストに乗ったのが1967年のことで、野生での絶滅が宣言されたのが、1980年。完全な絶滅を防ぐ唯一の方法は、保護されたアメリカオオカミを繁殖させることです。

80年代後半に、繁殖させたアメリカオオカミを自然に戻す試みが行なわれました。2006年には120匹まで増えたのですが、その後40匹にまで激減してしまいました。激減した主な理由は銃による怪我と、乗り物との衝突です。

DNAの解析は、ウーテン氏が送ってきた冷凍サンプルを元に行なわれました。読み込んだDNA配列情報を、北アメリカの野生に生息が確認されている犬科動物のデータと比較したのです。

比較データは、29匹のコヨーテ、10匹のタイリクオオカミ、10匹のシンリンオオカミ、11匹の飼育されているアメリカオオカミのものです。

その結果、ガルベストン島の犬科動物のDNAは、アメリカ南東部のコヨーテよりも、飼育されているアメリカオオカミとより多くの類似点があることが分かったのです。

これまでも、アメリカ南東部ではアメリカオオカミの目撃例はあったのですが、それらはコヨーテの見間違いだろうとされてきていました。しかし、今回の発見により本物のアメリカオオカミの遺伝子を持った生き物が存在することが確認されました。

発見はそれだけに止まりませんでした。アメリカに生息するほかのどの犬科動物も持っていない、独特な遺伝子を1つ持っていることも明らかになったのです。

つまりこれが意味することは、飼育されたものとは別の未発見のアメリカオオカミ集団で保持されていた遺伝子を、島に隔離されたコヨーテとの交雑種が密かに保持していたことを意味します。

アメリカオオカミとコヨーテは、明確に別の種であるとされていますが、異種交雑できてしまいます。今回発見されたガルベストン島の犬科動物は非常に紛らわしい見た目をしており、その姿はコヨーテとも、アメリカオオカミとも微妙に違っています。

 

コヨーテ、ガルベストン島の犬科動物とアメリカオオカミの比較写真 Credit: [A] GI canids: R. Wooten. [B] western coyote: Rich Keen/DPRA/Wikimedia Commons; GI canid: R. Wooten; red wolf: R. Nordsven/USFWS. [C] western coyote: Michael Vamstad/NPS; GI canids: R. Wooten; red wolf: R. Nordsven/USFWS
発見したウーテン氏も違いを定量化したわけではないので、はっきりと指摘することはできないといいますが、鼻の形や、全体の大きさは純粋なコヨーテとは明らかに違っているそうです。

ここで、種の定義について疑問が湧いてきますが、コヨーテとアメリカオオカミは、「生態学的種」として分けられており、生存地域によって定められています。

また、遺伝的な解析では、アメリカオオカミはタイリクオオカミとコヨーテの雑種であるという結果もあります。なので、種の違いが小さく異種交雑できて当然なのかもしれません。

 

今回の発見によって、この犬科動物生息域で繁殖させたアメリカオオカミを野生化することで交雑が起き、失われた遺伝子がアメリカオオカミに定着する可能性もあります。

また、ほかのコヨーテ集団を調べることで、アメリカオオカミのさらなる「幽霊遺伝子」を発見できるかもしれません。研究がすすむことで、アメリカオオカミが絶滅が回避できることを願ってやみません。

人間が絶滅しても生き残る生物はなに?「冬休み子ども科学電話相談」

referenced: mnn / written by SENPAI

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