「モンスターハウス」騒動はなぜ起こったか?攻撃行動時の脳のメカニズムに関する研究

society 2018/12/27

Point
■攻撃行動への加担を調べる手段としてキャッチボール課題を考案
■被験者が攻撃行動に加担する程度はその人の社会的不安傾向と相関
■扁桃体と側頭・頭頂接合部の結合強度が攻撃行動に加担する程度と相関

12月26日、バラエティー番組で罰則として芸人を夜通しで「おり」に閉じこめるという企画が行われ、見物人が殺到したため中止するという騒動が起こりました。

近年、SNSにおける炎上や学校でのいじめなど、攻撃行動が大きな社会問題となっています。上述のテレビ番組のできごとも、攻撃や攻撃への加担といった問題に近いでしょう。

攻撃行動の大きな問題点として、攻撃を主導する人に加え、周りの人が加担することで攻撃が重大化するという側面があげられます。しかしこれまで、周囲の人間を含め、人間の攻撃行動を引き起こす心と脳の働きの研究はほとんど進んでいませんでした。

そこで、国立法人情報通信研究機構脳情報通信融合研究センター(=CiNet)の高見享佑氏らの研究チームは、攻撃行動への加担を調べる手段としてキャッチボール課題という方法を実施しました。

その結果、人が攻撃に加担する程度とその人の社会的不安傾向が密接に関わっていることが分かったのです。

今回の騒動と直接関係はないものの、研究は12月21日づけで英国科学雑誌「Social Cognitive and Affective Neuroscience」に掲載されており、非常に時代背景を反映した研究となっています。

「Social Cognitive and Affective Neuroscience」
Behavioral and Functional Connectivity Basis for Peer-Influenced Bystander Participation in Bullying

 

キャッチボール課題では、被験者4人にコンピューター上でキャッチボールをしてもらい、2人が1人を攻撃する(ボールを投げる)という状況で、残りの1人がどう行動するかを分析しました。ボールは投げられると、格闘ゲームで使われるような不快音が鳴る仕組みになっています。

 

Credit : Social Cognitive and Affective Neuroscience「実際に用いられたキャッチボールソフトの画像」

 

キャチボール課題の前に、社会性不安と共感性の指標として広く使用されている「対人反応指標」を用いて被験者に質問をしています。

社会的不安は、「非常時では、不安で落ち着かなくなる」「気持ちが張りつめた状況にいると、恐ろしくなってしまう」などの項目を選択した人たちのことをさします。

その社会不安傾向が強い被験者たちは、2人から攻撃されている人に対して自分もボールを投げる「攻撃性」を示す傾向が明らかになったのです。

攻撃性に関わる脳の領域を特定

またこの研究では、行動実験(キャッチボール実験)とともに、fMRIを用いた攻撃時に関わっている脳の領域を特定する機能的実験も行なっています。

不安と関連があると予想される146個の脳領域を測定し、これらの間の結合を検討したところ、「扁桃体と側頭・頭頂接合部」、「前帯状皮質と後帯状皮質」の2つの結合強度が相関を示しました。
扁桃体と前帯状皮質は、ともに不安に関係する脳部位とされます。

今回の結果は不安が攻撃性を高める、という可能性を示しています。また逆説的にいえば、不安を減らすことで攻撃行動を減らせる可能性があるともいえるのです。

 

いじめや攻撃行動は、人々の社会不安から生じるということが明らかになりました。今後は道徳面だけでなく、本研究のように情報処理技術や薬理学的研究の観点から攻撃行動の研究が進めば、いずれ社会不安や攻撃行動が減り、穏やかな暮らしが実現するかもしれませんね。

 

心の安定を保つ鍵は「ネガティブな感情を受け入れる」ことだと証明される

referenced: CiNet / written & edited by Nazology staff

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