アイルランド民間療法「癒やしの土」から、世界的脅威である多剤耐性菌の成長を抑える細菌が発見される

life 2018/12/29

Point
■現代の抗生物質が全く効かない、多剤耐性菌(スーパーバグ)が世界的な健康への驚異となっている
■アイルランドの民間療法で使われていた土の中に、この多剤耐性菌の成長を抑える細菌がいることを発見
■この細菌が作っている物質はまだ特定されていないが、有効な新しい抗生物質として期待される

スウォンジ大学医学部によって、アイルランドで古くから民間療法に使われていた薬効性のある土を解析した結果、新種の細菌を発見されました。

その細菌は、6種類のうち4種類の多剤耐性菌に対して効果的に成長を抑制、その中にはMRSAも含まれています。研究論文は、「Frontiers in Microbiology」に掲載されました。

A Novel Alkaliphilic Streptomyces Inhibits ESKAPE Pathogens
https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fmicb.2018.02458/full

世界的脅威である多剤耐性菌(スーパーバグ)

最新の予測では、2050年までにヨーロッパで130万人が多剤耐性菌の感染が原因で亡くなるとされています。WHOは、この問題を国際保健、食品安全、発展に対する最も大きな脅威の一つと表現しています。

新たに発見された系統の名前は、ストレプトマイセス・ミオフォレア(Streptomyces sp. myophorea)。ストレプトマイセス属には、ストレプトマイシンなどの抗生物質を生産する種類の放線菌が多数属しています。

解析を行った土は、北アイルランドのファーマナ州のボホハイランドとして知られる土地で採取位されたもの。この土地はアルカリ性土壌の草原があり、その土には癒やしの力があると考えられてきました

多剤耐性菌に対抗するため、抗生物質に置き換わる方法の研究が進められてきており、多くの研究者が民間療法を含んだ新しい領域を探索しています。

民間療法を研究する取り組みは民族薬理学と呼ばれています。その取り組みにおいて、ストレプトマイセスのような抗生物質を生産することで有名な種類が見つかる環境にも焦点が当てられています。

民間療法から発見された「最新」医学

チームの研究者の一人、ゲリー・クイン博士はファーマナ州のボホに住んでいたことがあり、この土地に長らくある伝統療法に気づいていました。伝統的に少量の土を綿の布にくるんで、歯痛や、喉や首の感染症など多くの病気の治療に使っていました。興味深いのは、この土地は、ケルト社会の祭司であるドルイドによって1500年間支配されていたということです。

新たに見つかったストレプトマイセスについての研究の主な発見は、WHOが院内感染の原因としている6つの多剤耐性菌のうち、4種類の成長を阻害するバンコマイシン耐性腸球菌(VRE)、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)、クレブシエラ・ニューモニエ、カルバペネム耐性腸内細菌の4種。グラム陽性菌とグラム陰性菌、両方の成長を阻害します。

この種別は細胞壁の構造の違いによるもので、通常、グラム陰性菌は抗生物質に強い性質があります。

この新しい種類の細菌が生み出す、病原菌の成長を阻害する物質はまだ特定されていませんが、すでに研究は始まっています。

研究を行ったポール・ダイソン教授は、この発見が耐性菌に対抗する戦いを一歩進めたとし、伝統療法を見直して研究することの重要性を強調しています。

また、クイン博士は細菌を抑える物質を特定することで、多くの危険で致死的な耐性菌感染に効く薬を作ることができるだろうと述べています。また、今回調べた土の中から、他にも細菌に対抗できる微生物を見つけているそうです。

 

この土はドルイドの医学を継承した民間療法なのかもしれません。そう考えると、西洋医学以前の医学にもある種の経験的な合理性があったことになります。

それが、多剤耐性菌にも対抗できるとなると、今の医学以上の秘術が眠っていたことになるでしょう。中には「キャベツをかぶったら熱が引く」といった怪しい民間療法もありますが、太古の人類が培ってきた治療のための経験知は、うまく活用すれば今後の医療にとっての武器になるかもしれませんね。

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reference: Phys.org / written by SENPAI

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