海底はタイムカプセル。150年以上前の小氷期の影響で太平洋の海底水温が下降

science_technology 2019/01/08
Point
■太平洋の海底の水温が、14世紀半ば〜19世紀半ばの小氷期の影響で下がっていることが判明
■太平洋の表面の海水が循環して海底にたどり着くには、数百年の年月を要する
■海水の動きが遅いため、海の各層を調べることで、過去の海面の状況を知ることができる

地球温暖化が叫ばれて久しい今日このごろ。気温も海面温度も上がり続けるかたわらで、実は逆に温度が下がっている場所があります。

それはなんと、太平洋の深い深い海の底。太平洋の海面を含むすべての海の水温が上昇している一方で、太平洋の海底の水温は下降しているそうなのです。

この説を発表したのは、ウッズホール海洋研究所のジェイク・ジェビー氏とハーバード大学のピーター・ホイバーズ氏の共同チーム。14世紀半ば〜19世紀半ばにかけて続いた小氷期の影響で、海底の水温が下がっていることを発見しました。

過去150年間の太平洋の水温を分析した論文は1月4日発行の雑誌「Science」に掲載されました。

The Little Ice Age and 20th-century deep Pacific cooling
http://science.sciencemag.org/content/363/6422/70

150年以上も前の時代の気候が今でも影響しているとは、一体どういうことなのでしょうか?2012年に両氏が行った研究では、太平洋の表面の海水が循環して海底にたどり着くには、数百年もの年月を要することが示唆されていました。

つまり、小氷期の影響で冷やされた太平洋表面の海水が長い年月をかけ、ようやく海底に到着しつつあるということ。溶々たる海のスケールに気が遠くなりそうです。

海水の温度は0.02〜0.08℃ほど低下か

ジェビー氏らは、海底の水温を測ることで、数百年前の海面の水温を知ることができるのではないかと考えました。

それが本当に可能なのかを調べるため、両氏は「Argo計画」のデータを集めました。Argo計画は、地球の海洋表層(水深約2キロメートル)の水温・塩分プロファイルをリアルタイムで取得し、海洋物理学や水産学の研究に役立てる国際的な研究計画です。

また、英国の軍艦・海洋調査船「チャレンジャー」が、1872〜1876年の間に収集した水深2キロメートルの水温のデータも、比較対象として入手しました。

両氏は、これら2つのプロジェクトのデータから、過去150年間の太平洋の海水の循環を再現したコンピュータ・モデルを作成しました。

このコンピュータ・モデルから、太平洋の水深1.8〜2.6キロメートルの海水温度が、20世紀の間に下がっていることが判明。どの程度下がったかは現時点で正確に分かっていませんが、ジェビー氏らは0.02〜0.08℃ほど下がったと推測しています。

海水温度の低下は、「小氷期の影響で生じたのではないか」と彼らは話します。それ以前の10〜14世紀にかけては、「中世の温暖期」と呼ばれる温暖な時期が続き、太平洋の海水は温められていたと考えられます。

 

海底は、まるで数百年前の海面の状態を伝えるタイムカプセルのようです。海の各層を、樹木の年輪や氷床コアに例えることもできるでしょう。

海水のゆったりとした動きのお陰で、私たちは海の底を覗くだけで、はるか遠い過去についての知識を得ることができます。

一方で、逆に考えれば、地球温暖化を食い止めるには、相当に長い時間を要するということ。現代社会が抱える環境問題を一朝一夕に即解決というわけにはいきません。

ジェビー氏らは、今回の発見について「地球温暖化の理解に役立てられる」と話しています。

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reference: phys.org, mnn/ translated & text by まりえってぃ

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