■セイヨウミツバチの亜種であるケープミツバチには、メスの働きバチが単独で倍数体のメスを生み出せる雌性産生単為生殖という能力を持つものがいる
■雌性産生単為生殖をおこなう働きバチは、他のハチのコロニーに寄生して子孫を増やし乗っ取ることがある
■雌性産生単為生殖の原因遺伝子を見つけることに成功し、その複雑な遺伝様式が分かる
ミツバチは実は、とても社会的な昆虫です。働きバチが女王バチの世話をし、女王バチは群れ全体を維持するために繁殖を調節するという分業がなされています。
しかし、セイヨウミツバチの亜種である南アフリカのケープミツバチ(Apis mellifera capensis)は、このルールを破ることができます。「雌性産生単為生殖」という方法で、働きバチのメスが女王バチの命令を無視して自らの子供を作ることができるのです。
その原因遺伝子を、マルティン・ルター大学ハレ・ヴィッテンベルグの研究者たちが、今回初めて見つけることに成功しました。結果は「Molecular Biology and Evolution」で発表されています。
https://academic.oup.com/mbe/advance-article/doi/10.1093/molbev/msy232/
ケープミツバチの奇妙な「自己中心的」習性
最近問題となっているミツバチの大量消滅。以前、科学者らはミツバチを守るため、ケープミツバチを南アフリカから北アフリカへと移しました。しかしその結果起こったのが、元々いたセイヨウミツバチの亜種であるアフリカミツバチの大量死滅です。
ケープミツバチは、利他的な働きバチが他のアフリカミツバチのコロニーへの居候になり、エサをあさって雌性産生単為生殖で自分に忠実な働きバチを生みます。そしてすべてのはちみつを奪った挙げ句に、女王バチを追い出してコロニーを乗っ取ってしまうのです。
他のミツバチにとっては迷惑この上ないのですが、進化の視点からみると利にかなっています。女王バチがいなくなった時に、雌性産生単為生殖によって他のメスが繁殖を肩代わりして、コロニー全体を維持することができるからです。
この様な利点から、他のミツバチにもこの現象が広まっていてもおかしくないのですが、現実は違います。それはなぜでしょうか?
これまで、この謎を解くためにミツバチのゲノムの探索が行なわれていましたが、雌性産生単為生殖の鍵となっている遺伝子は見つかっていませんでした。