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「利他的」なミツバチを「自己中心的」にする遺伝子変異の原因がついに発見される (2/2)

2021.01.27 Wednesday

2019.01.09 Wednesday

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「自己中心的」になる原因遺伝子の発見経緯

今回の実験では、原因遺伝子を見つけるためケープミツバチのうち、雌性産生単為生殖によって染色体を2本持つ2倍体のメスを生み出せるメスの働きバチと、半数体のオスを生み出す雄性産生単為生殖のメスのゲノムを比較しました。

その結果、1番染色体に位置する候補遺伝子を見つけることに成功。この候補遺伝子は利己的になった働きバチが生殖するようになるのに必要となる遺伝子と考えられ、Thelytoky(Th)と名付けられました。

Th遺伝子は、細胞膜を貫通するヘリックス構造と細胞外に突出したシグナル分子が組み合わさった、受容体分子をコードしていたため、シグナルの分泌に関わっているものと考えられました。

すると、Th遺伝子にあるたった一つの変異が、大きな構造変化をもたらしていることが発覚。また、Th遺伝子のmRNAの量が、利己的になったハチでのみ増えていることも分かっています。

この変異はケープミツバチの他の巣箱への寄生性を示した系統でのみ発見され、他の種類のミツバチの働きバチでは見られません。また、この変異の入った対立遺伝子は、遺伝子パスウェイのスイッチを入れるという点では優性でした。これは、遺伝子ペアのうち、一方にこの変異が入るだけで機能するということです。

しかし、その裏には複雑なメカニズムが潜んでいました。この遺伝子変異は、対となる遺伝子に社会性や雄性産生単為生殖を示す遺伝子を必要としていました。つまり、この優性遺伝子同士がペアになってしまうと、有害な影響が出るだけでなく、場合によっては死に至るという性質を持っているというのです。

この遺伝子座は他のミツバチの種類にも存在しますが、変異のバリエーションは異なっており、他のバリエーションの組み合わせでは雌性産生単為生殖は起きません。ケープミツバチが持つ、Th遺伝子のバリエーションのみがTh遺伝子変異を補完していると考えられます。

150年間、養蜂家がケープミツバチのこの性質を他のミツバチに掛け合わせによって移そうと研究してきたものの、成功していないのは、1つの遺伝子変異を移すだけでは不十分だったということでしょう。

利己的になって生殖を始め、他のコロニーさえ乗っ取ってしまうケープミツバチの性質が、たった1つの変異で引き起こされていることが分かりました。しかし、その複雑な遺伝様式によって、他の種には広がらなかったのは、ミツバチたちにとっては幸運だったかもしれません。もし広がっていたら、ハチ同士による無秩序な騙し合い合戦が繰り広げられ、中には絶滅する種が出た可能性もあるのです。

ミツバチが「ゼロ」の概念を理解できると判明。昆虫で初

reference: Eurek Alert / written by SENPAI

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