「VR」を使った教育は教師役の「性別・年齢」によって効果が変化する

technology 2019/01/21

Point
■「VR」を使った教育によると、普通は行くことのできない体内や宇宙空間、また効果な実験器具を容易に用いることが可能
■「VR」内の教師を男女別に変えることで、理系科目である「STEM分野」の学習効果が大幅に増大した
■女生徒は「マリ」という年齢が近い同性の教師を、男子生徒は飛行型の「ドローン」を教師としたときに効果が見られた

専用ゴーグルを装着するだけで、立体的なバーチャル空間を体感することのできるVRテクノロジー。この技術を使った「VR教育」なるものが、あと2,3年もすれば世界中の教育現場を席巻しているかもしれません。

コペンハーゲン大学の心理学助教授であるグイド・マクランスキー氏の研究によると、VR教育によって「学習意欲」と「STEM学習」の向上が見られたと報告。さらに、男女によって仮想空間に存在する教師を変えることで、学習の効果も変化することが分かりました。研究の詳細は「Wiley Online Library」上に掲載されています。

A gender matching effect in learning with pedagogical agents in an immersive virtual reality science simulation
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1111/jcal.12335

「VR教育」は、まだ実践的なものではなく、従来の教育法と比較して、どのような利点があるかも不明でした。そこで、マクランスキー氏は、数百名の学生を対象に「VR教育」の効果について調査を実施。VR体験中に「脳波測定記録法(EEG=electroencephalography)」を使った認知および感情的学習のプロセスや学生たちの発汗反応・目の動き・表情の変化などを測定しました。

すると、学生たちは、与えられた状況の内に主体的に参加して学習しているという「自己効力感(=self-efficacy)」が高まったことで、学習への意欲が通常の授業と比べ格段に増大していたのです。また、マクランスキー氏によると「VR教育の大きな利点は、日常では足を踏み込むことのできない場所に行けることだ」と指摘します。

例えば、ヘモグロビンについて学習するとき、VRによって実際に血流の中を探検するようにして3次元的に体験することが可能なのです。他にも、課外授業には費用に無理があるような外国の遺跡探索や貴重な実験器具を用いた星空観察、危険な化学物質を用いた実験も容易になります。さらには、宇宙服をわざわざ着なくても太陽系を散歩することもできるのです。

男女で違う「STEM効果」

そして、もうひとつ重要なことに、バーチャル空間に模造された教師の違いによって、男女の「STEM学習」の効果が大きく異なることも判明しました。「STEM学習」とは、Science, Technology, Engineering , Mathsという4つの理系科目のことを指します。

具体的な方法として、同氏は、12〜14歳の男女学生66名を対象に調査を敢行。すると、女生徒は「マリ」と名付けられた若い女性を教師としたときに学習成果の向上が見られ、反対に、男子生徒は飛行型ロボットのドローンを教師としたときに有益な効果が見られたのです。

マクランスキー氏は「女生徒は、年齢的にも比較的近い同性の先生に接することで『自分もやればできる』という意欲が湧いてくる」と指摘。この傾向は、もともと女生徒にあまり人気のない「STEM分野」への興味関心を高める一助となりえます。

反対に、男子生徒が、ロボットやドローンといった非人間的な先生に惹かれる理由について、同氏は「男子学生がコンピューターゲーム内の主人公になった感覚で学習できるからだ」と説明します。まるで、ミッションをクリアしていくかのように課題をこなすことで、男子生徒は今まで以上に「STEM分野」にのめり込むことでしょう。

また、学習面以外でも、自分に合った先生を選択することで、中学生に多く見られるような不登校の数も大幅に減少することが期待されています。

 

とすれば、科目別に物理はアインシュタインを先生にしたり、世界史はナポレオンで、音楽はベートーヴェンで…。妄想すればキリがないですが、いずれにせよ未来の先生は、仮想空間の中で生徒の登校を待っているようです。

現代の子育てママはやめるべき? 時代遅れの教育方法8選

reference: eurekalert / written & text by くらのすけ

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