中世の聖典を書いたのは「修道士」ではなかった?「修道女」の歯から美しいラピスラズリが発見される

history_archeology 2019/01/11
Credit: Christina Warinner
Point
■中世ドイツの修道女の歯の化石から、ラピスラズリを原料とした顔料が発見された
■顔料は、修道女が筆記の際に筆を口につけたことにより付着したと考えられる
■当時の宗教書物に女性の名前はほとんどなく、この発見により、歴史家たちが思っていた以上に当時の女性が活躍していた可能性が示された

中世の聖典はこれまで、「修道士」によって書かれたと考えられていました。しかし、実は「修道女」が書いていた可能性が浮上したようです。

中世ヨーロッパ女性の歯の化石から、美しいラピスラズリを原料とした顔料が見つかりました。

どうしてそのような場所に顔料が見つかったのでしょうか?実はこの発見が、当時の出版物の生産に関する仮説を覆すものとなるかもしれません。

Medieval women’s early involvement in manuscript production suggested by lapis lazuli identification in dental calculus
http://advances.sciencemag.org/content/5/1/eaau7126

■なぜ顔料が「歯」に付着していたのか?

15世紀より以前、当時のヨーロッパの宗教に関する書物の筆記者やアーティストは、あまり自らの作品に署名を書くといったことをしませんでした。そしてその時代の作品において、特に「女性」の名前が出てくることは非常にまれであったため、歴史家たちは長くそうした作品は「男性」の修道士によって書かれたものであると考えてきました。

ごく最近になって、その常識に疑いの目が向けられるようになりました。他の多くの研究に加え、この研究においても当時の「修道女」が読み書きができただけでなく、中世において影響力のある本を記していたり、またその読み手であったことが分かってきたのです。

研究では、西暦1000~1200年あたりに生きたドイツの修道女の「歯」にフォーカスが当たりました。ヨーク大学とマックス・プランク研究所の研究者らが、歯に残されたラピスラズリの色素から「ある推論」を導き出しました。マックス・プランク研究所のモニカ・トロンプ氏はその推論について次のように説明しています。

「彼女の歯に残っていた顔料から、私たちはもっともらしいシナリオを完成させました。そのシナリオは、彼女は作品を作る過程において、色素が付着した筆の先を口につけていたといったものです」

■使用が許されたのは「著名人」のみ

研究ではこの事実が、ドイツの修道女がウルトラマリンの顔料(ラピスラズリが原料)を使用していたことを示す「最も古く直接的な証拠」であるとしています。

アフガニスタンにあるたった1つの地域から採掘され、ヨーロッパ・アジア間の数万キロといった距離を運ばれたラピスラズリは、当時とても高価でぜいたくなものでした。そしてそこから精製されるインクは、中でも卓越した筆記者やアーティストによって使用されました。つまり、化石の女性はその中の1人として名を馳せていたことが考えられるのです。

この事実は歴史家たちの認識を変えつつあります。つまり、当時の女性は私たちが考えていた以上に活躍の場を与えられていた可能性があるのです。

とはいえ、女性の筆記者の名前が歴史的にほとんど確認されていないこともまた事実。どれほど当時の女性がその分野において活躍していたのか、はっきりとしたことは分かりません。しかし、今回のような発見がなければこうした当時の女性の活躍は、現代の誰の目に届くこともなかったでしょう。

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reference: sciencealert / written by なかしー

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