他人と10分間見つめ合うだけで、薬物使用時に起きる「アルタード・ステイツ現象」が発生する

psychology 2019/01/18

Point
■ウルビーノ大学の研究によると、他人と10分間見つめ合うだけで「アルタード・ステイツ」というトリップ感覚を体験することができる
■「アルタード・ステイツ」は、強度な多幸感を伴うような「意識解離性」の心理状態で、基本的に薬物や瞑想でしかおこなえない
■この現象は、鏡の中に写る自分を見つめても起こるが、他人同士が見つめ合う方がより強力に作用すると判明

一種のトリップ体験である「アルタード・ステイツ(=変性意識状態)」。「自我の喪失感」や「強い幸福感」「宇宙との一体感」が得られるといわれています。ただしこの心理状態に至るには、精神が極限まで追い込まれた状態をつくりだす必要があるため、容易なことではありません。

しかし、イタリアのウルビーノ大学の研究では、なんと「他人と10分間見つめ合う」だけで「アルタード・ステイツ」に近い状態を引き起こすことが判明したのです。研究の詳細は2015年に「ScienceDirect」上に掲載されています。

Dissociation and hallucinations in dyads engaged through interpersonal gazing
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0165178115003212

主任研究員のジョヴァンニ・カプート氏の説明によると「『アルタード・ステイツ』は『解離(Dissociation)』と呼ばれる心理状態を示す特徴があり、自意識と現実との結びつきが薄れることによって生じる」現象のこと。

カプート氏は、調査対象として20名の男女を募って「実験グループ」を構成。グループ内で2人ずつのペアを組んでもらい、1mほど離れた椅子に向かい合うようにして座り、10分間互いを見つめるように指示しました。また、見つめ合っているあいだは、なるべく無表情を保つよう被験者に頼んでいます。

一方、実験結果を比較するため、さらに20名の「コントロール・グループ」を設定。このグループにも、同じようにペアを組んでもらうのですが、椅子は双方とも壁側に向けてあり、10分間壁を見つめてもらいました。

その際、部屋の照度を「0.8ルクス(ルーメン毎平方メートル=lm/m2)」に固定。カプート氏は「この明度において、互いの顔の輪郭や部位は見分けられるが、顔の色調はぼんやりと希薄化するレベル」だと説明しています。

10分間の試験後、被験者には実験中と実験後の体験に関する質問に答えてもらいました。1つは試験中の「解離性症状」に関する項目について、もう1つは試験後に知覚された「相手の顔(実験グループ)」と「自分の顔(コントロール・グループ)」についてです。

すると、「実験グループ」に属するペアは、「コントロール・グループ」に比べて、試験前とまったく異なる「恍惚とした体験をしていた」と報告。「解離性症状」においても強い体験をしており、例えば、「色調強度の希薄化」や「音の静寂化」「空間や時間のまどろみ」といった項目について高いスコアを記録していたのです。

また、試験後の「顔の知覚」について、「実験グループ」の90%は「相手の顔の部位が歪むのを感じた」と言い、さらにその内の半数は「相手の顔の内に自分の顔を知覚する」という「自他の未分化状態」が引き起こされていたのです。

「見つめ合う」ことで「アルタード・ステイツ」の近似現象が生じる根本原因について確かなことはいまだ不明ですが、「部屋の明度」はあまり関係がないようです。「コントロール・グループ」も同じ部屋で実験していましたが、「解離症状」はまったく見られていません。

カプート氏によると、重要なのはやはり「視線の動き」とのこと。「コントロール・グループ」は、目の前の壁ならどこでも見つめて良いのに対し、「実験グループ」は相手の顔に視線を固定しておく必要がありました。

この現象は、鏡の中に写った自分の顔を凝視することでも起こることが分かっており、その結果については「鏡内顔面異常(=strange-face-in-the-mirror illusion)」の現象として同氏が2010年に報告しています。

ところが、他人同士が見つめ合うほうがより強力な「アルタード・ステイツ」現象を引き起こすことがわかったのは、今回の研究で初めてです。

 

ちなみに薬物や催眠による洗脳と違って「見つめ合い方法」は、健康に害もないとのこと。気になる方は、パートナーや友人と一緒に試してみてはいかがでしょうか。

人の意識は「エネルギーのループ」であるとする説が提唱される

reference: digest.bps / written & text by くらのすけ

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