皮肉な結果。遺伝子組み換え食品を「知っている」と答えた人々がもっとも知識が不足していた

society 2019/01/26

Point
■遺伝子組み換えを自分はよく理解していると考える人の多くが、実はそれをもっとも理解していないことが判明
■過激思想はしばしば、複雑なトピックを実際以上に自分は理解していると思い込むことが原因で生まれる
■能力の低い人ほど自らの容姿、発言、行動を高く評価する「ダニング・クルーガー効果」の事例の一つ

遺伝子組み換え食品に対する人々の反応から、ある面白い現象が見えてきました。

「危険」とする情報があふれる一方、遺伝子組み換え食品には安全性を示す科学的データも多々存在します。しかし依然として人々の不信感は強く、世の中に広く受け入れられてはいません。

その理由の一つが、「食品における知識不足」だとする説が「Nature Human Behaviour」に掲載されました。この説を発表したのは米・コロラド大学ボルダー校でマーケティングを研究するフィル・ファーンバッハ氏らです。

こうした知識の欠如には、ある興味深い皮肉が含まれています。遺伝子組み換えについて多くを知っていると考える人の多くが、実際には遺伝子組み換えをもっとも理解していないことが明らかになったのです。

Extreme opponents of genetically modified foods know the least but think they know the most
https://www.nature.com/articles/s41562-018-0520-3

抵抗が強い人ほど知識が少ない

ファーンバッハ氏らは、米国、フランス、ドイツに住む成人2,000名以上を対象に、遺伝子組み換え食品に関する意見の調査を行いました。また、遺伝子組み換えのトピックについて自分がどの程度理解しているかについても尋ね、科学や遺伝学の知識を正誤問題を使って測定。たとえば、「普通のトマトには遺伝子が無いが、遺伝子組み換えのトマトには遺伝子がある」、「どの動植物にも遺伝子がある」といった問題です。

その結果、遺伝子組み換え食品に対する抵抗感が強い人ほど、科学や遺伝学に関する客観的知識が少なく、自己判断による誤った知識に陥りやすいことが判明しました。つまり、遺伝子組み換え食品に反対する人ほど、遺伝子組み換え食品について自分はよく理解していると信じる傾向が強いのに、実際には他の人より科学や遺伝学への理解度が低かったのです。

能力が低い人ほど「ダニング・クルーガー効果」に陥る

このことは、実はそれほど意外ではありません。ファーンバッハ氏は、この結果は過剰思想の心理状態に関する従来の研究で示されてきた説と一致していると語っています。過激思想はしばしば、複雑なトピックについて実際以上に自分は理解していると思い込むことが原因で生まれます。

この事象から浮かび上がるのは、知識の偏りに立ち向かうことを阻む、尽きることのないパラドックスの存在です。能力の低い人ほど自らの容姿、発言、行動などについて高い評価を行ってしまう「ダニング・クルーガー効果」は、その他の分野でも無数に観察することができます。

強い反対意見を持つ人ほど教育を必要としているのに、学びを受け入れようとする姿勢に欠ける傾向があります。ある知識に対する過剰な自信は、新しい情報への心が開かれていないことと関連していると、ファーンバッハ氏らは説明しています。教育を通じて人々の見方を変えるには、まずはこの「知識のギャップ」を本人が認識することが必要不可欠です。

 

遺伝学に大きな影響を与えたチャールズ・ダーウィンはかつて、「無知は知識よりも自信を生み出す」と語りました。実際に遺伝子組換え食品が安全かどうかは、しばらく決着が付きそうにないでしょう。しかしこの事例は、新しい物事をオープンな心で知ろうとする客観性と寛容さがいかに大切かを、私たちに語りかけています。

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reference: sciencealert / translated & text by まりえってぃ

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