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「自閉症のワクチン原因説」は事実無根。自らの経験に基づいたある医師の主張

2021.01.27 Wednesday

2019.01.16 Wednesday


「ワクチンが自閉症を引き起こす」という噂が、世界中でまことしやかに囁かれています。米・ベイラー医科大学でワクチン学を研究する小児・内科医ピーター・ホテズ氏は、この俗説を真っ向から否定する一人です。

自らも自閉症と知的障害を持つ娘レイチェルさんを育てた経験を踏まえて、新しい自著 “Vaccines Did Not Cause Rachel’s Autism”(ワクチンがレイチェルの自閉症を引き起こしたのではない)の中で自論を展開しています。

ホテズ氏は、科学的な観点からワクチンと自閉症の仕組みを解説し、レイチェルさんに関する極めて個人的な話題に触れつつ、ワクチンと自閉症の因果関係を否定。欧米でワクチンを使用する人が減ったことで、各地ではしかが大流行したり、インフルエンザによる子どもの死が増えたりしたことに強い危機感を感じて、ホテズ氏は筆を手にとったのです。

自閉症のワクチン原因説はなぜ生まれた?

自閉症のワクチン原因説が誕生したのは、1998年に医学雑誌「The Lancet」に掲載されたある論文がきっかけです。この中で、MMRワクチン(はしか、おたふく風邪、風疹を予防するワクチン)が自閉症の蔓延を引き起こす可能性が指摘されました。

しかしこの論文はのちに、出版社によって取り下げられています。根本的な欠陥を有し、科学的に無効であることが示されたのです。それに加えて、複数の大規模な集団ベースの研究から、MMRワクチン接種を受けた子どもとそうでない子どもで、自閉症が発生する確率は変わらないことが証明されました。

ところが攻撃の的は、MMRワクチンから、小児ワクチンの多くに当時含まれていた保存剤「チメロサール」へと移ります。この時も、集団ベースの調査によって、自閉症とチメロサールには相関が無いことが証明されました。事実、チメロサールを含むワクチンが市場から姿を消して以降も、自閉症の発症率は下がっていません。

その後、ワクチン摂種の間隔が短いことが要因だという説も浮上しましたが、瞬時に消え去りました。最近では、いくつかの小児ワクチンに含まれる補助剤こそが犯人だという新たな噂が取りざたされていますが、これもまたまったくの誤りだとホテズ氏は説明しています。

このような「もぐらたたき」にあうことは、新しいワクチンの宿命と言っても良いでしょう。新しいワクチンが登場するたびに、自閉症との関連が話題に上がっては、それが間違いであることを証明するだけのために、無駄な時間・費用・労力が費やされています。

100万人以上の子どもを巻き込んだ複数の臨床試験で、MMRワクチン、ワクチンに含まれるチメロサール、ワクチン摂種間隔の短さ、補助剤のいずれにも自閉症との関連が無いことが、今や明々白々たる事実としてはっきりと示されています。

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