「自閉症のワクチン原因説」は事実無根。自らの経験に基づいたある医師の主張

life 2019/01/16


「ワクチンが自閉症を引き起こす」という噂が、世界中でまことしやかに囁かれています。米・ベイラー医科大学でワクチン学を研究する小児・内科医ピーター・ホテズ氏は、この俗説を真っ向から否定する一人です。

自らも自閉症と知的障害を持つ娘レイチェルさんを育てた経験を踏まえて、新しい自著 “Vaccines Did Not Cause Rachel’s Autism”(ワクチンがレイチェルの自閉症を引き起こしたのではない)の中で自論を展開しています。

ホテズ氏は、科学的な観点からワクチンと自閉症の仕組みを解説し、レイチェルさんに関する極めて個人的な話題に触れつつ、ワクチンと自閉症の因果関係を否定。欧米でワクチンを使用する人が減ったことで、各地ではしかが大流行したり、インフルエンザによる子どもの死が増えたりしたことに強い危機感を感じて、ホテズ氏は筆を手にとったのです。

自閉症のワクチン原因説はなぜ生まれた?

自閉症のワクチン原因説が誕生したのは、1998年に医学雑誌「The Lancet」に掲載されたある論文がきっかけです。この中で、MMRワクチン(はしか、おたふく風邪、風疹を予防するワクチン)が自閉症の蔓延を引き起こす可能性が指摘されました。

しかしこの論文はのちに、出版社によって取り下げられています。根本的な欠陥を有し、科学的に無効であることが示されたのです。それに加えて、複数の大規模な集団ベースの研究から、MMRワクチン接種を受けた子どもとそうでない子どもで、自閉症が発生する確率は変わらないことが証明されました。

ところが攻撃の的は、MMRワクチンから、小児ワクチンの多くに当時含まれていた保存剤「チメロサール」へと移ります。この時も、集団ベースの調査によって、自閉症とチメロサールには相関が無いことが証明されました。事実、チメロサールを含むワクチンが市場から姿を消して以降も、自閉症の発症率は下がっていません。

その後、ワクチン摂種の間隔が短いことが要因だという説も浮上しましたが、瞬時に消え去りました。最近では、いくつかの小児ワクチンに含まれる補助剤こそが犯人だという新たな噂が取りざたされていますが、これもまたまったくの誤りだとホテズ氏は説明しています。

このような「もぐらたたき」にあうことは、新しいワクチンの宿命と言っても良いでしょう。新しいワクチンが登場するたびに、自閉症との関連が話題に上がっては、それが間違いであることを証明するだけのために、無駄な時間・費用・労力が費やされています。

100万人以上の子どもを巻き込んだ複数の臨床試験で、MMRワクチン、ワクチンに含まれるチメロサール、ワクチン摂種間隔の短さ、補助剤のいずれにも自閉症との関連が無いことが、今や明々白々たる事実としてはっきりと示されています。

出生前に生じる自閉症が生後のワクチン接種で起きるはずがない

そもそも、ワクチンが自閉症の原因になる合理的な理由は存在しません。これは、自閉症やそれに付随する知的障害の進行の仕組みからも明らかです。

胎児の脳の発達に関係している自閉症遺伝子は少なくとも99種類は存在し、その多くは脳細胞の遺伝子発現やニューロン間の情報伝達に関わっています。これらの遺伝子は、出生前の発達段階において、胎児の脳に解剖学的変化をもたらします。これは、ワクチン接種が施されるよりずっと前のこと。つまり、自閉症はゲノム配列が行われるプロセスの中で生じるのです。

ホテズ氏は、自閉症患者のコミュニティーに深く関わり、ワクチンの開発に30年の歳月と情熱を捧げてきたワクチン学者として、国民から集めた貴重な税金をワクチンと自閉症の因果関係を探そうとする無意味な研究に費やさないよう、米国議会に強く訴えています。どうせなら、自閉症患者やその家族のコミュニティーの支援に税金は使われるべきです。就職先の斡旋や心理カウンセリングなど、改善が必要な分野は無数に存在します。

また、自閉症の神経生物学や発生経路に関して、さらなる研究を進めることも重要です。調査が進めば、自閉症にともなう知的障害を和らげるための革新的方法を見つけることができるかもしれません。

 

様々な情報が飛び交うワクチン界隈。もちろん、ワクチンが自閉症に関係している可能性を100%否定することはできません。少しでもワクチンへの知識を深め、恐怖を和らげるためには、患者一人一人に寄り添う形での情報発信が必要となるでしょう。

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reference: thehill / translated & text by まりえってぃ

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