テスト前の「不安軽減」で合格率が大改善!そのシンプルな実験方法とは

psychology 2019/01/20

Point
■米国のある高校で、試験前の不安を軽減することで、理系科目の試験に落ちる低所得層の生徒を半減させることに成功
■不安を書き出す方法、不安が合理的なことを理解する方法、これらを両方を行う方法のどれもが効果的
■試験の点数は、少なくとも部分的には、科目についての知識よりも心の持ち方に関係

VRでアインシュタインになると本当に成績が上がるらしいので、結局頭脳も「気」からなのかもしれません。

米イリノイ州のある公立高校では、低所得層の生徒が約4割も生物の学年末試験に落ちることが問題となっていました。これは高所得層の生徒よりもかなり高い割合です。

しかしこの低い合格率を、なんと劇的に改善する方法があるというのです。

スタンフォード大学の心理学者クリストファー・ロゼック氏らは、生徒の試験前に抱く不安を軽減した結果、理系科目の試験に落ちる低所得層の生徒を半数にまで減らすことに成功しました。論文は1月14日付けで「PNAS」に掲載されています。

Reducing socioeconomic disparities in the STEM pipeline through student emotion regulation
https://www.pnas.org/content/early/2019/01/09/1808589116

理科系科目への苦手意識が原因

高所得層と比較して、低所得層の高校生が理系科目の単位を落とす傾向があることは事実です。このため、高校生が大学で理科や数学を専攻し、卒業後に科学に関係する高収入の職業に就くことは、高所得層より低所得層のほうが少ないという現象が生まれています。

この差異の背後には多くの要因が存在しますが、その一つは低所得層の生徒が持つ理系科目に対する苦手意識だと、ロゼック氏は語っています。こうした苦手意識が、試験前の不安を高め、結果的に成績の低下をもたらすというのです。

過去に行われた小規模な調査では、試験前の不安を取り除くことで試験成績が向上することが明らかになっています。そこでロゼック氏らは、同校の新入生1,175名を対象にした、より大規模な調査を行いました。この高校では、参加した生徒のうち、285名は低所得層に属しています。また、生物の学年末試験に落ちる生徒が、高所得層では6パーセントに留まるのに対し、低所得層では半数以上にも上っていました。

「不安を書き出す」「ストレス反応のメリットを認識する」

ロゼックらは、生徒たちを4つの群に分けました。対照群の生徒は、試験前の不安を単に無視するように指示されるだけです。そして3つの実験群のうち、あるグループは、試験前の不安な気持ちについて書き出しました。これは、試験に集中するために頭の中を綺麗に整理するための心理手法です。別のグループは、「脈が速くなる」、「手のひらに汗をかく」といったストレスに対する生理反応が集中力を助けることを解説した記事を読みました。残りのグループは、これらの両方を行いました。

その結果、実験群に属する205名の低所得層の生徒のうち、実に82パーセントに相当する168名が試験に見事合格。対照群に属する80名の低所得層の生徒のうち、試験を通過したのが49名(61パーセント)だったことに比べれば違いは歴然です。不安な気持ちを書き出す方法、不安を抱くことが合理的なことを説く記事を読む方法、これらを両方を行う方法のどれもが、同様の効果を示しました。

感情の制御が上手い人には効果なし?

一方で、高所得層の生徒には、これらの方法は特に利益をもたらしませんでした。ロゼック氏は、高所得層の生徒は、感情の制御にもともと熟達しているため、心理的介入の効果が特に無かったのではないかと推測しています。

当然ながら、こうした心理的介入は、生徒間の習熟度のギャップを完全に埋めてくれるものではないでしょう。若者を科学の道へ導く原動力は、試験の点数だけではなく、科学への興味・関心から生まれるものです。

とはいえ、この研究は、試験の点数は、少なくとも部分的には、科目についての知識そのものよりも、むしろ心の持ち方に関係していることを明示しています。

今回の対象は低所得層でしたが、気の持ちよう一つで理系科目の試験成績がアップすれば、実社会に確実な変化がもたらされるはずです。ロゼック氏らの研究結果には、近年日本で取りざたされている「理工系離れ」問題を解決するためのヒントが隠れているかもしれません。

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reference: sciencenews / translated & text by まりえってぃ

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