パナマ運河よりも長い!巨大な粒子加速器の開発が計画中

quantum 2019/01/20
Credit: CERN
Point
■CERNによって次世代の大型衝突加速器FCCの計画が発表され、全長100kmと巨大なものになる予定
■行われる衝突実験は、まず電子-陽電子のレプトン衝突が計画されていて、かかるコストは90億ユーロ
■ヒッグス粒子の詳細を調べることが目的であるが、新しい素粒子の発見も期待されている

ヨーロッパの素粒子物理学者たちが、現在の大型ハドロン衝突型加速器の後継となる世界最大の衝突加速器のコンセプトデザインを発表しました。円周は約100km。建設されれば、フランスとスイスの国境をまたぐ巨大なものとなるでしょう。LHCで2012年に見つかった、奇妙なヒッグス粒子の詳細を研究が、大きな目的の一つです。

現在フューチャーサーキュラーコライダー(FCC)と呼ばれていて、建造に必要なコストは90億ユーロとされています。LHCの運用終了後の2040年に運用が開始される予定であると、CERNは声明を発表しています。

LHCは陽子に陽子をぶつけることで、現在可能とされる最もエネルギー量の高い衝突を生み出せます。一方のFCCは電子と陽電子を衝突させるもので、LHCの35分の1のエネルギーしか生み出せません。

とはいえ、最もエネルギーの高い電子-陽電子衝突です。この電子-陽電子衝突でもヒッグス粒子が形成されるには十分なエネルギーはありますが、LHCでの衝突に比べてずっとバックグラウンドが静かになるため解析が簡単であるという利点があります。というのも、陽子はクオークとグルーオンという異なるタイプの素粒子からできた乱雑な物質だからです。それに比べて、電子と陽電子は物理学者の知る限り、単独の素粒子だけでできています。

電子-陽電子衝突の目的は、よく知られた標準模型を超えた物理学を見つけることで、ヒッグス粒子の崩壊と標準模型による予言の間に矛盾が無いかを調べることでそれを成し遂げようとしています。

Credit: CERN / 未来円形衝突型加速器のイメージ

FCCも将来のLHCの7倍の出力のある陽子衝突実験に向けた、足がかりを作ることも目的とされています。その実験で新しい素粒子が飛び出てくる可能性もあり、その先触れを電子-陽電子衝突は示すかもしれません。陽子衝突実験は、追加で150億ユーロを使ってFCCのトンネルに作られる予定で、2050年代の稼働を目標としています。FCCによって、この究極の加速器を作るためのコストを50億ユーロ削減できるのです。

CERNは以前も同様の戦略をとって成功しています。LHCは、電子-陽電子衝突加速器であったLEPのトンネルを再利用して作られているのです。

世界的に見ると、ヨーロッパの物理学組織には競合相手がいます。中国は独自の電子-陽電子衝突加速器の計画を持っており、100kmの長さのものを2030年までに作る予定で、その後に陽子加速器も作ると言います。一方、日本の物理学者は20kmの直線の国際リニアコライダー(ILC)を計画しています。この計画でも電子-陽電子衝突によってヒッグス粒子を生み出すことを目的としています。

しかし、LHCが稼働したときに比べると、新しい加速器の建設事例は減っています。物理学者たちはヒッグス粒子に加えて、あるいは変わりとなる新しい粒子が現れることを望んでいました。LHCが標準模型の数十年に渡る膠着状態を打ち破る発見をすると考えていたのです。しかし、未だにLHCはその様な素粒子を見つけていません。新たな発見なしに、政府に何十億もの出資をせまるのは、ヒッグス粒子の研究だけでは厳しいかもしれません。

 

パナマ運河よりも長いというのはすごいですね。標準模型を破る新しい素粒子が存在するのかどうかは未知ですが、実験するためには莫大な資金が必要となります。素粒子物理学のその先を見てみたい気はしますが、費用に合った発見は得られるのでしょうか?

粒子加速器に頭を突っこんだらどうなるのか?

reference: Science / written by SENPAI

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