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脚でビョーン!と地面を蹴って飛ぶ新型ドローン”Sparrow”が登場

2021.01.27 Wednesday

2019.01.27 Sunday

Point
■より効率的に翼を使い、離着陸時に脚を用いる新型ドローン”Sparrow”が開発された
■「ブローン・ウイング」が、従来の翼の約2〜3倍の浮力を生む
■収納式の脚によるバネの力で、離陸に必要な浮力の大部分が生まれ、着陸時の衝撃を緩和される

今や、撮影や荷物の配送、農薬の散布など、さまざまな分野で活用されていますドローン。特殊な翼と脚を持つ最新式のドローンが、アフリカで開発されました。

実は、ドローンには、設計上の根本的な問題があります。重い荷物を速く遠くまで輸送することを目的に作られた固定翼ドローンと、狭い場所で離着陸をするよう設計された回転翼ドローンでは、本来の性質が異なります。問題は、これらの特質を同時に叶えようとする時に生じます。

離着陸時に機体を上方へ向ける垂直離着陸型ドローン、回転プロペラを装えたドローン、離着陸や推進に4つの回転翼を用いるクワッドローターでありながら垂直離着陸を可能にする固定翼を備えたドローン…など、これまでにさまざまな機種が開発されてきました。ですが、すべてをカバーしようとした生まれる妥協案は、必然的に重量・コスト・複雑さの増大という望まない結果をもたらしてきました。

そこで、ある新しいアイディアを考案したのが、アフリカのベンチャー企業Passerine社。鳥をヒントに、より効率的に翼を使い、離着陸時に脚を用いる新型ドローン”Sparrow”(ツバメ)を開発しました。

Sparrowのエンジンは固定翼の上部に搭載されており、翼とフラップの上から排気が出る仕組みです。翼とフラップの上を空気が素早く通過することで、従来の翼の約2〜3倍の浮力が生まれます。また、空気がエンジンを直接通過することで、機体がそれほど動いていない時でも浮力を得ることができます。これによりSparrowは、従来のドローンよりずっと短い距離で離着陸し、ずっと遅い速度で飛ぶことが可能です。

「ブローン・ウイング」と呼ばれるこの仕組みは、ウクライナの航空機やNASAの静粛短距離離着陸研究機にも採用されたことがありますが、普及はしませんでした。

要因の一つは、地上から手が届かない高さにあるため、メンテナンスが難しく費用が掛かることです。また、エンジンそのものが浮力の大半を生むため、万一離着陸時にエンジンが停止すると重大な危険に繋がります。さらに、長い滑走路はすでに存在するためので、離着陸の距離が短いことによるメリットはあまりありません。

これに対して、ドローンの場合、こうしたデメリットは最小限で済みます。航空機よりもずっと小さなドローンは、エンジンが翼の上にあってもメンテナンスに問題はありません。万一エンジンが停止しても、運んでいるのが荷物だけであれば被害は深刻ではないでしょう。また、依存可能なインフラがほとんど無いドローンにとって、離着陸の距離が短いことはかなり重要です。

ブローン・ウイングの力だけでは機体を持ち上げることができないので、ここで登場するのがSparrowの最大の特徴である2本の脚です。脚で「ビョーン!」と地面を蹴るバネの力で、離陸に必要な浮力の8割が生まれます。脚は、飛行中は機体内部に収納されますが、着陸時に再び飛び出て衝撃を和らげてくれます。

積載量、速度、飛行距離、効率性という固定翼の利点と、回転翼と同じ小回りの良さを併せ持つSparrowは、ハイブリッド設計の宿命である重量・コスト・複雑さの増大とは無縁の画期的発明と言えるでしょう。回転翼のように空中で停止することはできないため、撮影には向いていませんが、荷物の輸送にはかなり使えるはずです。

現在、最終調整段階にあるSparrowですが、今年5〜8月頃にかけて操縦パイロットの養成プログラムがアフリカの各地で開始される予定です。自慢の翼と脚を携えた「ツバメ」たちが、アフリカだけでなく世界中の空を悠々と飛び交う日は、すぐそこまで来ているかもしれません。

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reference: spectrum.ieee / translated & text by まりえってぃ

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