FPS(シューティングゲーム)で認知スキルが上がるという研究が注目される

science_technology 2018/02/22
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ゲームは時間の浪費でしかない―。そんな考えが一般的である中、ビデオゲームを貴重な学習ツールとして研究しようとする動きが復活してきています。どうやらゲームは誘惑に満ちたものであると同時に、若者の頭の発育にも利用できるようです。

しかも今回話題にされているのは、ゲームの中でも一人称視点シューティングゲーム。物理ベースの「ポータル」や、「コールオブデューティー」といったヒット作が、実生活にも役に立つように認識機能を強化することができるのかという問題があがっています。

果たしてこれらの利用目的が定まっていない商用ゲームが、注意力や鋭い反射力または記憶力強化といった一般の認知スキルを育てることができ、生活の中でもその能力を使えるのでしょうか。

柔軟性についての全て

UCSFの教授で、年齢に伴う記憶力低下を改善するためのゲームを作っているアダム・ガズリー博士にとっては、ゲームすることは、情報処理の方法を本質的に改善する可能性を持っています。

ガズリーによると、最低ラインは脳が刺激に適応すること、つまり柔軟性を高めることです。

2016年に、彼のチームは科学的に最適化して作られたゲームであるNeuroRacerが、どのようにして高齢者のマルチタスク能力を20歳代と同等にすることができたかを示しました。このトレーニングにより、参加者は作業記憶や注意力の改善を経験しており、その効果は最初にゲームを開始した時から半年続きました。その上、参加者たちはゲームをしている間、大脳の前頭前野を動員する頻度が増えることが示されました。この領域は高度な思考を司どっているため、ゲームは本質的に情報処理の過程を変化させることが示されたことになります。

NeuroRacerは店の棚に並んだゲームというよりも、利用目的に特化したゲームです。それは、学習用というよりも治療用です。しかし、ガズリーは、この研究が「ゲームによって脳内の幅広い柔軟性が刺激されうる」という概念を証拠づけると考えています。そして、それが脳の一機能というよりは、推論、抑制、作業記憶といったトータルでの認識機能に影響していると考えています。

これは非常に大胆な主張です。そして、その証拠は積み上がってきています。

学ぶための学習

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ペースの早いアクションゲームの脳の柔軟性への影響を研究している、ジュネーブ大学の認知神経科学者であるダブネ・バヴェリアによると、この研究分野は人気が出てきています。もちろんいい意味で。

探索段階で、バヴェリアは学部学生の一人が研究で使うコンピューター上の注意能力のいる作業において非常に優れていることに気づきました。そして、この学生は「コールオブデューティー」や「メダルオブオナー」といった1人称や3人称でのシューティングゲームを日常的にプレイしていることがわかりました。

こういった「心を麻痺させる」ゲームは本当に注意力制御や焦点を合わせる能力に深いインパクトを与えるのでしょうか。

一連の研究で、バヴェリアとその他の研究者は、アクションゲームと関連した利点が、低レベルの知覚能力からより高レベルの認知的適応性まで広い範囲に及ぶことに気づきました。例えば、毎週5時間から15時間のゲーム時間を持つと、視覚能力が強化され、散らかった環境でその詳細を拾い上げる能力が上がることが、彼女たちの研究でわかりました。

ゲーマーはまた、コンピューター上のテストで複数の対象物を追跡し続ける能力が発達しているようです。ゲーマーではない人達は3つの対象物しか追跡できなかったのに対し、ゲーマーはその2倍の量をこなすことができます。さらに、一般に彼らはマルチタスク能力が平均よりも上です。複数のタスクに直面した時、処理スピードが上がっても正確さを維持できます。それが意味するのは、一般に言われているような注意能力の問題がこのケースでは見られないということです。

他の研究で、バヴェリアは一群の参加者で、脳内で立体物を操作する能力を調べました。多くの数学や工学への応用に不可欠なスキルである空間認識能力を調べるための難しいタスクです。

それからチームは参加者に2週間の間に40分に分けて10時間、ゲームをプレイをしてもらいました。その後のコンピューターを使ったテストでは、顕著な改善が見られました。そして、その効果は5ヶ月後も見られました。

こういった効果は何によって起こるのでしょう。バヴェリアによると、ゲームはプレイヤーに学習の仕方を教えることができます。ゲーマーは新しいタスクに直面した時、よりよくこなす必要は特にないのです。それでも、ゲーマーではない人に比べて急な学習曲線を描きます。少なくとも、ある運動や、知覚スキルにおいてはです。ある意味においては、ゲームは将来似たようなタスクを把握するために参考に出来る「テンプレート」をプレイヤーに提供するのです。

ここまで、ゲームが持つ利点を見てきましたが、こういった利点が実際の学業の成績を上げてくれる訳ではないことも事実としてあります。ゲームとは関係のない、読み書きや数学に関する知能などは、ゲームをするだけでは上がりません。ゲームに夢中になる子供達は、ゲームに時間を割くことで他の経験をする暇がなくなるのも問題です。ですが、1日に30分など適度にゲームをすることで楽しみながら、マルチタスキングや、認知機能、空間認識能力などを上げていくのが現実的で良さそうです。

 

via: npj Science of Learning/ translated & text by Nazology staff

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