最小のスリット? 新たな二重スリット実験が行われる

chemistry 2019/01/23
Credit:Markus Grueninger, University of Cologne
Point
■二重スリット実験は、光の粒子と波の2重性や、重ね合わせの原理を示した重要な実験
■共鳴非弾性X線散乱という方法を使って、酸化イリジウム結晶内の並んだ2つの原子からX線の放射を引き起こし、その結果干渉縞が現れる
■干渉縞から、酸化イリジウム内の原子の特性について、多くの情報が得られる

ケルン大学の物理学者によって率いられた国際チームによって、新たな種類の二重スリット実験が行われました。

実験では共鳴非弾性X線散乱を使い、グルノーブルの欧州シンクロトロン放射光研究所で行われています。実験によって、固体の電子構造についての深い理解が得ることができました。論文は「Science Advances」で発表されています。

Resonant inelastic x-ray incarnation of Young’s double-slit experiment
http://advances.sciencemag.org/content/5/1/eaav4020

原子レベルのスリット!イリジウム原子を用いた実験

二重スリット実験は、物理学においては根本をなす重要性を持っています。200年前にトーマス・ヤングによって行われ、干渉縞によって光の波としての性質が証明されました。

また20世紀には、粒子である電子や分子も干渉縞のパターンを表すことが示され、量子は粒子と波の不思議な2面性を持つことが分かっています。

Credit: Markus Grueninger, University of Cologne / X線光子(紫)の強いビームが、結晶内の2つの隣接するイリジウム原子(緑色)に当たり、原子内の電子が励起。2つのイリジウム原子の後ろ(赤)で重なったX線光子は、二重スリットでいう干渉縞と考えられる。

一方今回の研究では、共鳴非弾性X線散乱(RIXS)を用いて酸化イリジウム(Ba3CeIr2O9)を調べています。共鳴非弾性X線散乱とは、高輝度のX線が内殻電子を共鳴によって外殻へと励起し、緩和する際により弱いX線が放射されるというものです。

酸化イリジウムの結晶には、強く平行化されたX線光子が照射されます。このX線はイリジウム原子によって散らされますが、イリジウム原子はヤングの実験におけるスリットの役割をします。RIXS技術の急速な発展と結晶構造の選択の巧妙さによって、二量体と呼ばれる隣接する2つのイリジウム原子における散乱を観察できたのです。

その結果得られたパターンは干渉縞を示しており、分子2個が重合してできた二量体が、二重スリットとして働いたことがわかりました。また、そのパターンから二量体について多くのことが判明。古典的な二重スリット実験とは違って、X線光子の非弾性散乱は、二量体の励起状態という情報を生み出しています。それには対称性があるため、固体の動的な物理特性についての情報を持つのです。

このRIXS実験においては、先進的なシンクロトロンと繊細な実験設定が必要となります。イリジウム分子だけを励起するために、シンクロトロンの幅広いスペクトラムのうち、ほんの狭い部分だけが選び出されました。さらに、散乱された光子はもっと厳密にそのエネルギーと散乱の方向を選んでいます。そのため、2−3個の光子しか残りませんでした。要求される精度が高いため、こういったRIXS実験が行えるシンクロトロンは世界でも2機しかありません。

今回の実験で使われた方法を用いることで、他の物質固体の機能や特性への深い理解が期待されています。

 

イリジウム原子の二量体によるスリットは原子レベル。なので、これが最小のスリットということになるでしょう。それでも干渉縞ができるということは、量子論は盤石ですね。

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reference: Phys.org / written by SENPAI

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