ブラックホールのホーキング放射を実験室で確認!

space 2019/01/24

Point
■ブラックホールはホーキング放射によって、ゆっくりと蒸発しているとされている
■内部に微小模様を持つ光ファイバーに高速で切り替わる2つの光パルスを通すことで、事象の地平線を模倣
■そこに他の光の刺激を入れることで、ホーキング放射を観測

ホーキング放射の存在を実験的に証明する試みが、一歩進んだようです。

光ファイバーによって事象の地平線と類似するものを作り、ブラックホールの物理学のモデルが生み出されています。熱いホーキング放射を生み出したとするこの研究は、イスラエルのワイツマン科学研究所で行われ、1月9日付けで「Physical Review Letters」に公表されています。

Observation of Stimulated Hawking Radiation in an Optical Analogue
https://journals.aps.org/prl/abstract/10.1103/PhysRevLett.122.010404

ホーキング放射とは

一般相対性理論によるブラックホールからは、何も逃れることができません。事象の地平線を超えて内側に入ったものは、決して戻ってこれないのです。ブラックホールの重力があまりに強いため、宇宙で最も速い光でさえも脱出速度に達することができません。

そして一般相対性理論の元では、ブラックホールからの電磁波の放射はありえません。しかし、1974年、若き日の故スティーブン・ホーキング博士が、量子論を適用することでブラックホールから放射されるものがあるという理論を提唱しました。

この理論上の電磁波放射は、ホーキング放射と呼ばれていて、黒体放射によく似ています。ブラックホールの温度によって生み出され、その大きさは質量に反比例しています。

この放射は極めて遅くブラックホールが蒸発していることを意味していますが、計算から導かれるその放射は極めて弱いため現在の観測機器でとらえることはできません。

それが、実験室内でブラックホールの類似物を作って実験する動機となっています。生み出された類似物は、流体上の波や音波で作られたものや、ボース=アインシュタイン凝縮を利用するもの、そして、光ファイバーを通る光を利用するものです。事象の地平線を生み出せるものなら何であれ、ホーキング放射が観測される可能性はあると言います。

もちろん、本物の重力によるブラックホールを作るわけではありません。一般相対性理論によって表現できるブラックホールとの数学的な類似物を利用するのです。

難題だった「事象の地平線」を模倣

今回の研究で使われたのは、数年前から開発されていた光ファイバーによるシステムです。光ファイバーの内部には小さな模様があり、通路として働きます。このファイバーに光が侵入すると、少しだけスピードが落ちます。事象の地平線と類似させるために、光ファイバーへは高速で切り替わる2色のレーザーパルスが送り込まれました。前の光が後ろの光へと干渉することで、事象の地平線の効果が示され、ファイバーの屈折率の変化として観察することができます。

次に、このシステムに光を追加すると、逆転した周波数の放射が増加します。つまり、逆転した光は、事象の地平線から奪われるエネルギーであり、誘導されたホーキング放射を表しているのです。まさに素晴らしい発見です。

そして次の目標は、自発的なホーキング放射を観測することです。誘導された放射は、外部からの電磁波による刺激を必要とします。ブラックホールから現れるホーキング放射は、誘導されたものではなく、自発的な多様性を持っているはずです。

この実験には他にも問題があります。事象の地平線周囲の環境を研究室で正確に再現するのが不可能なため、一義性に欠くことです。例えば、その放射が通常の放射の増幅によって作られていないと、100%の確信を持って言うことはできないのです。しかし、研究チームは実験で見られるのはホーキング放射であることに自信を持っています。

また、研究チームは発見が予期したものとは異なることを発見しています。計算よりもホーキング放射が弱かったことです。その解明は次の研究の課題となるでしょう。

 

光の減速と干渉を利用して事象の地平線を作り、そこに外部から光を入れることでホーキング放射を模倣する今回の研究。自発的なホーキング放射は量子ゆらぎを表現できるのでしょうか?今後の研究に注目です。

「別の宇宙」のブラックホールの痕跡を発見したという研究

reference: Science Alert / written by SENPAI

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