液晶でも結晶でも液体でもない「新物質」を発見

chemistry 2019/01/23

Point
■結晶のように規則的な構造をしているにもかかわらず、液体のように振る舞う上、液晶とも異なる物質が生まれる
■この物質は垂直な基板上を液体のように滑り落ち、その際内部の分子がキラリティーに応じた方向に回転している
■今後の研究によって、軟質材料に結晶のような規則的なパターンが持ち込める様になる可能性がある

東京工業大学を中心とした研究者によって、自発的に組織化した有機分子が、結晶に似た3次元の整然とした組織を持った、大きな液滴になっていることが観測されました。

垂直の基板に垂らすと、液体のように滑り落ち、その構成分子は、キラリティーに応じた時計回りあるいは、反時計回りの回転を示しました。驚くことにこの物質は、落ちる過程においても液滴中の構造規則性が全く損なわれなかったとのこと。研究は東京工業大学の科学技術創生院を中心とした7つの組織の協力で行われ、1月21日付けで「Nature Materials」に掲載されています。

Chiral crystal-like droplets displaying unidirectional rotational sliding
https://www.nature.com/articles/s41563-018-0270-7
Credit: Springer Nature

結晶化した固体の内部の原子は、規則的に並んでいます。一方、液体内部の分子では、方向性が完全に失われています。

その中間である液晶においては、1次元あるいは2次元の規則性で並んだ分子が、他の軸では規則性を失った状態になります。今回の物質は、2次元の規則性を持った層が、あたかも単結晶のように規則的に重なった立体構造をしており、液晶とは一線を画しているのです。

Credit: Springer Nature

研究では、トリフェニレンから派生したキラル分子を加熱した後に冷すことでこの物質を作りました。キラル分子とは、鏡像を重ね合わせることのできない分子で、キラリティーとはその性質のこと指します。

出来上がった物質をX線粉末回析したところ、予期しない構造を示していることがわかりました。この物質は見た目は「シロップ 」のように明確な形を持っていないにもかかわらず、サンプル全体の立体構造が1つ単結晶のようになっていたのです。

この物質が、なぜ液体とも結晶ともつかない振る舞いをするのかはまだわかっていません。その振る舞いは物質の構造固有のものかもしれないですし、流れ落ちる際の性質によるのかもしれません。物質が固体と液体の両方の性質をあわせ持つことから考えると、規則的な構造を自己修復する際に、回転滑り運動を引き起こす可能性が考えられます。

Credit: Springer Nature

範囲の広い長距離秩序構造を可能にする分子設計は、光学や電子工学の分野においては喉から手が出るほど求められているものです。今回の発見は即座に応用できるわけではありませんが、さらなる研究が推し進められることは確実。軟質材料の分野での後続研究が増え、その結果応用に結びつくことが期待されます。

固体であり液体でもある「超イオン化アイス」を作ることに初成功

reference: kek.jpChemistry World / written by SENPAI

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