NASAが心臓を宇宙でつくろうとしている理由

technology 2019/01/27

Point
■Techshot社がNASAと協力して宇宙で心臓再生をする「BBF」という3Dプリンターを開発中
■重力下で心臓を再生すると、それ自体の重みで崩壊してしまうため、微小重力空間での再生は効果的である
■再生には、患者本人の「幹細胞」を使用するため、移植後の拒絶反応も起こらない

臓器提供を待つ患者の数は年々増加しており、2017年には世界中で7600人を越えました。しかも、そのほとんどがドナーの提供を受けることができずに、毎年数千人の命が失われています。

この現状を解決するため、宇宙テクノロジー開発会社のTechshotは、心臓を再生するための新たな3Dプリンターを開発しています。それも、NASAと協力して、「ISS(国際宇宙ステーション)」での心臓再生を計画しているのです。研究の詳細は、1月22日付けで「BBC News」に報告されています。

Why your new heart could be made in space one day
https://www.bbc.com/news/business-46944972

なぜ宇宙なのか?

宇宙で心臓をつくることには、大きなメリットがあります。心臓や肺は、非常に複雑な神経構造をしており、地上で再生しているとぞれ自身の重みで崩れてしまうのです。そこで研究者たちは、宇宙のような微小重力空間で臓器再生をおこなえば上手くいくのではないかと思いつきました。

現在、ISSに臓器再生を可能にする新型の3Dプリンターを送り込もうという計画が進んでいます。そのために開発されているのが、「BBF(=BioFabrication Facility)」と呼ばれる3Dプリンター。NASAと共同で発明されているこの装置は電子レンジほどの大きさで、心臓の細やかな神経を再現できるプリント技術を搭載しています。

Credit:TECHSHOT

BBFは、2019年5月に打ち上げ予定の「SpaceX CRS-18」に乗せられて宇宙に送られるとのこと。Techshotのリッチ・ボーリング氏いわく当面の課題は、「宇宙空間でBBFプリンターがどれほど機能するかを見極めること」。この作業を1年かけておこない、その後は医療技術促進のため、世界各国の研究者たちに公開される予定です。

その後は一度地球に持ち帰り、実験結果で得られた改善点の見直し作業がおこなわれます。すべての点検が終了次第、再びISSに送られ、本格的な心臓再生に取りかかるとのことです。これらには少なくとも10年はかかる見込みで、順調に行けば2030年頃には宇宙初の人工心臓が誕生している可能性が高いと報告されています。

さらに、この心臓再生には、待機患者本人の幹細胞が使用されるため、移植の際の拒絶反応は起こらないと考えられています。それによって、ドナーから臓器提供を受けるよりも、拒絶抑制薬の投与や追加処置をする必要がなく、コストを抑えた治療が可能になるのです。

しかしながら、心臓再生が完璧に実現したとしても、大量の待機患者をまかなうほどの臓器を再生するとなると、かなり大規模な施設が必要となります。残念ながら、ISSにはそれを補えるほど広さに余裕がありません。

そこで、アメリカのSpace Tango社は、地球の周回軌道上に「ST-42」と呼ばれる数機の無人ロケット打ち上げを2020年代半ばに予定しています。その中に、BBFを搭載しておけば、自動で心臓が再生され、世界中の待機患者を救う一助となるのです。

現在、アメリカでは毎日20人以上が臓器提供を受けられずに亡くなっており、ボーリング氏は「この問題に対処することが何よりも先決である」と話しています。

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reference: futurism , bbc/ written & text by くらのすけ

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