ベッドを揺らすと記憶力が向上することがわかる

life 2019/01/25
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Point
■眠る際にベッドを揺らすことで、睡眠導入が早くなり、眠りも深くなることを実証
■眠りの質が良くなることで、記憶定着能力も改善
■同様の効果はマウスにおいても見られ、バランスや方向感覚への刺激が必要であることがわかる

小さな子供をベッドで寝かしつけたり、ハンモックで揺られながら眠ったことはありますか?

新しい2つの研究で、睡眠時の揺れの効果が検証された結果、揺らすことが質の良い睡眠をもたらすだけでなく、睡眠時の記憶の強化にも効果があることがわかりました。研究は1月24日付けで「Current Biology」に発表されています。

Whole-Night Continuous Rocking Entrains Spontaneous Neural Oscillations with Benefits for Sleep and Memory
https://www.cell.com/current-biology/fulltext/S0960-9822(18)31662-2
Rocking Promotes Sleep in Mice through Rhythmic Stimulation of the Vestibular System
https://www.cell.com/current-biology/fulltext/S0960-9822(18)31608-7

睡眠の質が向上、寝付きも改善

2つの研究で対象となったのは、成人したヒトとマウス。ヒトを対象とした研究を行ったジュネーブ大学のローレンス・バイヤー氏は、次のように述べています。「眠りの質が良いということは、寝付きが早く中途覚醒が無いということです。研究の参加者は、元々眠りの質が良かった人でさえも、揺らした際にはさらに寝付きが早くなって、深い眠りの時間が伸び、夜の間興奮が少なくなっていたことが示されました。このように、揺らすことは眠りにとって効果的です」

バイヤー氏の以前の研究では、45分間の昼寝の間揺らし続けることで、睡眠の導入が早くなり、ぐっすり眠れることが示されています。新たな研究では、夜の睡眠時に揺らすことによる脳波への影響を調べようと考えました。

研究では、18人の健康な若い成人の睡眠時のモニターを研究室で行いました。実験は三日間で、一晩目は環境に慣れてもらうために普通に就寝。2日目はゆっくり揺れるベッドで寝てもらい、3日目は同じベッドで揺れのない状態で寝てもらいました。

その結果、揺らした時に参加者の寝付きが早くなっていたことがわかりました。寝付いたあとは、ノンレム睡眠の時間が増えており、眠りも深く、途中で目覚めることも少なくなったとのこと。

揺れで記憶の定着率も向上

次に、この質の良い睡眠が記憶に影響するのかを調べました。記憶の統合を評価するため、参加者には単語のペアを覚えてもらいました。それから、その晩にその単語をどれだけ正確に覚えているかを評価した後、目覚めてからの記憶の定着と比較をおこないました。その結果、揺れるベッドで寝たときのほうが朝の記憶テストの点数が高いことがわかりました。

さらに、睡眠中の脳波にベッドの揺れが影響するのかを見ました。すると、ノンレム睡眠中の特徴ある脳波がベッドの揺れの動きに同調することを発見。その結果、連続した揺れが、眠りと記憶の強化に重要な働きを持つ視床皮質ネットワークの神経活動を同調させることがわかりました。

もう一つのマウスを使った研究は、ローザンヌ大学で行われ、人以外の種でも揺れが眠りを促すのかが調べられました。マウスを飼っているカゴを市販のシェイカーで揺らして、眠りを見た結果、人と同等の効果が見られました。

しかし、マウスにとって最適な振動数は人とは違っており、4倍速いものでした。揺れはマウスが眠りにつくまでの時間を短くし、睡眠時間を長くしましたが、眠りの深さへの影響は見られませんでした。

Credit: cell / 通常睡眠時(黒)と揺らした時の記憶定着率

研究者らは、眠りへの揺れの影響が前庭器官へのリズム刺激と結びついているのではないかと考えました。前庭器官はバランスや方向感覚を司る内耳の器官です。

そこで、耳石の機能が失われていることで、前庭器官が働いていないマウスを使って研究を行いました。その結果、前庭器官が働いていないマウスでは、揺れによる睡眠への効果がなくなることがわかりました。

これらの発見は、不眠症や気分障害に新しい治療法をもたらすかもしれません。また、老化によって睡眠の質が下がり、記憶力の低下が見られる老人にとっても良いニュースです。

今後は、この揺れによる刺激を感知する神経系と、眠りを司る神経系の間の関係を調べたいとしています。光遺伝学の様な最新の研究ツールが研究の役に立つでしょう。それにより、睡眠のメカニズムの基礎的な理解が得られると同時に、不眠症のような睡眠障害の治療のための新しい標的が見つかることが期待されます。

失われつつある現代の「プルースト効果」。 無意識に流出する「記憶」を呼び戻す

reference: EurekAlert! / written by SENPAI

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