生まれつき盲目の人は精神疾患を患いにくいことが判明

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Credit: pixabay
Point
■先天的、または生後初期の段階で盲目であることが、統合失調症などの精神疾患を防ぐ保護因子の役割を果たす
■皮質盲の人において統合失調症が報告されたケースが一例も無かった
■早期に視覚を失うことで、音声認識、聴覚注意、記憶、言語、主観的体験の構築など、脳の他の機能が強化

まるで『バードボックス』の世界…?

瞳の動き、まばたきの回数、網膜の異常といった視覚に関する障害は、統合失調症を患っている人により多く見られるため、かつてはこうした視覚障害が統合失調症を引き起こす可能性が指摘されてきました。

ところが1950年代以降、生まれつき、または生後初期の段階で盲目の人は、そうでない人よりも統合失調症などの精神疾患の罹患率がむしろ低いことを示す、真逆の説が登場。盲目であることが、統合失調症を防ぐ保護因子の役割を果たしていることが明らかになってきました。

最近、このことを証明する初めての大規模集団調査が、西オーストラリア大学のヴェラ・モーガン氏らによって行われました。中でも、皮質盲の人において統合失調症が報告されたケースが「一例も」無かったことが、注目を集めています。論文は、雑誌「Schizophrenia Research」に掲載されました。

Congenital blindness is protective for schizophrenia and other psychotic illness. A whole-population study.
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0920996418304055

盲目であることが統合失調症のリスクを消す

もちろん、症例の欠如は、それが完全に存在しないことの証明にはなりませんが、症例が一つも無いとは衝撃的です。モーガン氏は、盲目であることが、統合失調症の進行リスクを減らすばかりか、消すことさえあると説明しています。

モーガン氏らは、西オーストラリアの州規模で実施された、先天性および6歳時点までに現れる、視覚器や視路の損傷により生じる盲目、または後頭葉の損傷により生じる皮質盲の人々における、統合失調症の罹患率に関する調査のデータを使用しました。前者は遺伝だけでなく、脳卒中などによっても生じることがあり、後者には緑内障や先天的な水晶体の変形によって起きることがあります。

14〜35歳の調査対象者50万名近くのうち9,120名が、何らかの精神疾患を患っており、そのうち1,870名が統合失調症でした。これは、この年代における統合失調率の罹患率0.5パーセントとほぼ一致しています。

視覚器などの周辺器官の障害で視覚を持たない人は613名、皮質盲の人は66名でした。前者のうち、精神疾患を持つ人は8名、そのうち統合失調症を発症している人はわずか2〜3名でした。つまり、統合失調症の罹患率は0.2パーセントと、通常よりを下回ります。そして後者に至っては、精神疾患を持つ人が1人もいなかったのです。

モーガン氏らは、生後早い時期に盲目であること、とりわけ皮脂盲であることが、精神疾患のリスクを下げると説明しています。

視覚を補うために発達した機能が精神疾患を防ぐ可能性

早い段階で視覚を失うことで、音声認識、聴覚注意、記憶、言語、主観的体験の構築など、脳の他の領域の機能が強化されます。そして、こうした機能のすべては、統合失調症を患った人々では正常に機能しません。モーガン氏らは、早い段階で視覚機能を補うために発達する神経可塑性こそが、統合失調症で損なわれるこれらの機能を有利に働かせるのではないかと考えています。

周辺器官と皮質のどちらに障害があるかによって効果に違いが生じる原因ははっきり分かっていませんが、脳の領域同士の接続に与えられる影響が異なることが背景にあるのかもしれません。

 

切っても切れない脳と視覚の深い関係。そしてこのメカニズムが解かれれば、統合失調症の複雑な要因を解くヒントが得られるだけでなく、知覚の仕組みに焦点を当てた統合失調症の新しい治療法・予防法が開発できる可能性が広がるはずです。もしかしたら「目を開けたら死ぬ映画」『バードボックス』でも、この現象が元になっているのかもしれませんね。

精神病は「脳の視覚ネットワークの不全」と関係している可能性

reference: digest.bps / translated & text by まりえってぃ
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