ブラックホールからの強大なジェット噴出は「負のエネルギー」によるという研究が発表

space 2019/02/03
Credit: Kyle Parfrey
Point
■ブラックホールからは強大なプラズマのジェットが観察されることがあり、その生成については長らく謎に包まれていた
■コンピューター・シミュレーションを用いることで、それが「負のエネルギー」を持つ粒子によって引き起こされている可能性が示された
■この説が正しければ、これまで矛盾していると考えられてきたブラックホールに関する「2つの説」に整合性が保たれることとなる

ブラックホールが活発に活動しているとき、奇妙なものが観察されることがあります。とてつもなく大きなプラズマのジェットが、光速に近いスピードで極から噴射されているのです。

これまで、強い重力をもつブラックホールから、それがどのようにして生み出されてきているのかは大きなミステリーとされてきました。しかし、科学者らがコンピューター・シミュレーションを用いることで、1つの答えにたどり着いています。彼らによれば、「負のエネルギー」を持つと思われる粒子がブラックホールからエネルギーを抽出し、それをジェットとして噴射している可能性があるとのことです。

First-Principles Plasma Simulations of Black-Hole Jet Launching

https://journals.aps.org/prl/abstract/10.1103/PhysRevLett.122.035101

「2つの説」の架け橋に

この説が正しければ、これまで矛盾していると考えられてきた、ブラックホールからのエネルギー抽出に関する「2つの説」に対して初めて整合性が保たれることとなります。

1つ目の説は「Blandford-Znajek process(BZ過程)」と呼ばれるもので、ブラックホールが回転する過程でエネルギーを抽出するために、その磁場がどのように利用されているのかを示すものです。

この説では、降着円盤の中の物質が渦を巻きながら事象の地平面に近づいていくほどに磁力を蓄えていき、やがて磁場を形成します。その地場の中で、ブラックホールは極と赤道の間の電圧を誘導するための回転する導体として働きます。そしてこの電圧が、極からジェットとして解放されるということです。

2つ目の説は「Penrose process(ペンローズ過程)」と呼ばれるもので、ここでは磁性よりもむしろ、運動量の保存について語られています。ブラックホールの回転エネルギーは、事象の地平面の内側に位置しているのではなく、その外側で極において事象の地平面と接する「エルゴ球」の中にあります。

この説によれば、エルゴ球の中で物体が分裂した場合、そのひと欠片がブラックホールへと向かっていき、残りがブラックホールの回転に逆らって外へ放り出されたとすると、エルゴ球の外に出た物質は、ブラックホールの回転からエネルギーを得てから出現します。そしてこのプロセスが「負のエネルギー」と呼ばれるものを生み出していると考えられているのです。

あくまでもシミュレーション

研究チームは、ブラックホールの強い磁場のもとで無衝突プラズマのシミュレーションをおこないました。無衝突プラズマにおいては、粒子同士の衝突の効果は無視できるほどに小さいとされています。

シミュレーションの結果、そこでは自然に「Blandford-Znajek process(BZ過程)」が再現されました。電子と陽電子がブラックホールの周りで逆方向へと動き、極でジェットとして噴出されるエネルギーを電磁場に発生させていたのです。

しかしそれだけではなく、シミュレーションでは「Penrose process(ペンローズ過程)」のバリエーションも確認されました。つまり、相対論効果によっていくつかの粒子は、ブラックホールの中に消えゆく際に「負のエネルギー」を持っている可能性があるとされたのです。そしてその小さな粒子が、ブラックホールの回転を遅らせているとされました。

しかし、このシミュレーションは完璧なものとは言い切れません。降着円盤を考慮に入れていませんし、電子陽電子対生成についても詳細に組み込まれているわけではありません。研究チームは、さらに現実的なシミュレーションを開発するために研究を続けていく予定です。

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reference: sciencealert / written by なかしー

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