自殺者の多くが「死にたい」と言わないことが明らかに…問い直されるメンタルケア

psychology 2019/02/08
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Point
■自殺者の大多数が、生前に医師から自殺願望を尋ねられた時点では、それを否定する
■逆に、自殺願望を示す人のうち、実際に自殺で死亡する人の割合はごく一部
■患者が自殺願望を吐露しないからといって、自殺の危険性が低いと短絡的に判断するべきではない

自殺しそうな人に、「自殺する?」と聞いても無駄かもしれません。

自殺者の大多数が、死の数週間〜数ヶ月前の時点では、医師に尋ねられても自殺願望を示さないことが明らかになりました。世間で広く受け入れられている「医師が患者のリスクを適切に評価すれば、少なくとも短期間での自殺は正確に予測できるはず」という考え方に疑問を呈する、衝撃的事実です。

研究を行ったのは、オーストラリアのニュー・サウス・ウェールズ大学で精神医学を研究するマシュー・ラージ氏ら。論文は、オンライン雑誌「BJPsych Open」に掲載されました。

自殺者の6割が自殺願望を否定

ラージ氏らが、自殺願望に関する70件の研究データをメタ分析したところ、自殺願望を示した人のうち、実際に自殺で死亡した人の割合はわずか1.7パーセントであることが明らかになりました。また、自殺した人の約6割が、精神科医や一般医に自殺願望の有無を尋ねられた際にそれを否定。精神科医の治療を受けていなかった自殺者に至っては、そのおよそ8割が、一般医に自殺願望の有無を尋ねられた際にそれを否定していたのです。

自殺願望を周囲に漏らしたとしても、実際に自殺する人がごく一部であることは確かです。しかし自殺者のうち、生前に自殺願望を周囲に示す人がどれほどいるかを示す調査は今回が初めてとなります。

単純な診断方法がきかなくなる

この結果は、単に自殺願望があるかどうかだけで精神ケアの方法を決めることは、もはやできないことを示唆しています。本人が自殺願望を示すか示さないかに関係なく、心の不調を抱えた人すべてに、その人の立場に立った質の高いケアを提供することが重要です。

ラージ氏は、患者が自殺願望を吐露しないからといって、自殺の危険性が低いと短絡的に判断するべきではないと語っています。「死にたい」という気持ちに取り憑かれる「自殺念慮」の有無は、短期間での自殺リスクを測るスクリーニングテストの一部としてこれまで用いられてきましたが、これは必ずしも有効な手段とは限りません。

中には、恥ずかしさや止められたくないという気持ちから、自殺願望を医師から隠す人もいるでしょう。自殺したいという心情は急速に変動しやすく、自殺願望が芽生えて時を置かず衝動的に自殺を図るケースも。患者本人の苦しみに寄り添い、たとえ彼らが自殺願望を示さなかったとしてもケアを確実に継続することが重要だと、ラージ氏は語っています。

「死にたい」と思っていても実際には自殺せず、「死にたい」と思っていなくても衝動的に自殺してしまう…。人間の心とは、実に不確かで捕らえ所が無いものです。

また、近しい人が自ら命を絶った時、「その気持ちになぜもっと早く気づいてあげられなかったのだろう」と悔やむ人たちへ向けて、ラージ氏は次のようなメッセージを送っています。

「本人が自殺願望を持っていたとしても、実際に自殺を図る危険性は低かったのです。また、もし本人が自殺願望を持っていることに周囲が気づかなかったとしても、それは彼らの過ちではありません」

気温上昇で自殺が増えているという研究結果

reference: medicalxpress / translated & text by まりえってぃ

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