死にかけた細菌は他の細菌を生かすために驚きの行動に出ると判明

biology 2019/02/07

Point
■LL37という抗菌ペプチドに蛍光タンパクGFPをつなぎ、細菌集団に投与した際の挙動を調査
■抗菌ペプチドによって死んだ細菌が、大量に抗菌ペプチドを吸収して、他の細菌を守る挙動が観察される
■観察によって得られた情報から数理モデルを作って、この現象について物理的な説明がなされる

細菌が抗生物質から生き延びるための戦略は、いくつか存在します。抗生物質への耐性を遺伝子レベルで生み出す方法、成長を遅らせる方法、菌膜に隠れる方法などです。

プリンストン大学とカリフォルニア大学ノースリッジ校(CSUN)の研究者が、上記とは別の新しい方法を発見しました。それは、「自己犠牲」によるものです。論文は「eLife」に掲載されています。

Heterogeneous absorption of antimicrobial peptide LL37 in Escherichia coli cells enhances population survivability
https://elifesciences.org/articles/38174

細菌「俺の屍を超えていけ」

ある特定の抗生物質を加えられた、大腸菌の集団の中の死にかけた細菌。この細菌が、あえて抗生物質を大量に吸収し、他の細菌が生き延びて成長する手助けをしていることがわかりました。

実験ではまず、ヒトの皮膚や気道といった外界の細菌と触れる機会の多い器官で、自然に生み出されているLL37という抗生物質に、緑色の蛍光を発するGFPタンパク質をつないだものを作ります。そして細菌の集団の中で、この分子の蛍光がどのように動くのかを追跡した所、下の動画で示されるように、抗生物質が死にそうな細菌の中に蓄積することが示されたのです。

プリンストン大学の機械宇宙工学助教授アンドレ・コスマール氏は、CSUNのチームと協力し、今後の研究に貢献するための数理モデルを作りました。この数理モデルは、異なる濃度の抗生物質にさらされた細菌集団の動態を表現しており、どのように死んだ細菌が有害な分子を吸い込んで、生き延びた細菌の成長が遅れるかを示しています。計算の元になったのは、CSUNの実験室で行われた実験です。

「数理モデルはこの現象の実際の機能に物理的な説明を与えてくれます。観察で驚かされたのは、抗生物質の細菌抑制に必要とされる濃度が、細菌の数に依存していたことです。私たちのモデルは、それがなぜ起こるのか説明することができます」とコスマールは述べています。

数理的には理解が得られているものの、この現象が分子レベルでどのように起こっているのかは未だに謎です。CSUNのサタール・タヘリアラギ氏は以下のように述べています。

「この研究は、私たちが今まで考えもしなかった多くの疑問を生み出しています。私たちの発見には、数十億年にもわたる細菌の進化への含みもあります。また、新規の抗生物質の開発や処方量の設定などにも役に立つでしょう。」

 

「かまうな!ここはオレに任せて先に行け!」的な行動を細菌がしていることがわかりました。高度な生物ではなくても、利他的行動が進化しているということは、利他的行動自体に本質的な進化的アドバンテージがあるということでしょう。それを持って愛と呼ぶのかどうか?神様も困ってしまいそうな問題ですね。

細菌の会話を「盗聴」して殺すウイルスが発見される

reference: Princeton University / written by SENPAI

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