「意識」とは何か?植物状態の人の意識状態を客観的に測れるfMRIの技術

spiritual 2019/02/09
Credit: pixabay
Point
■意識があるときにしか見られない脳の複雑かつダイナミックなネットワークが存在することが判明
■このネットワークの有無を指標にすれば、脳損傷患者の意識状態をより客観的に測れる
■将来的には、外から意識の特性を調節し、意識や行動反応を失った患者の意識を復元させることも可能

広大な宇宙へ出かけ、素粒子のミクロな世界を理解するまで進歩した人間。ところが、意識、つまり「世界を経験・認識しそれを他者に伝える働き」が脳内でどのように起きているかを、私たちはまだほとんど理解していません。

この長年の謎に光明を投じる研究が、近ごろ発表されました。それによると、意識があるときにしか見られない脳の複雑かつダイナミックなネットワークが存在するとのこと。そして、そのネットワークの有無を指標にすれば、脳損傷患者の意識状態をより客観的に測ることが可能になるそうです。論文は、雑誌「Science Advances」に掲載されました。

Human consciousness is supported by dynamic complex patterns of brain signal coordination
http://advances.sciencemag.org/content/5/2/eaat7603

意識的思考には、高次認知機能を司る前頭前野皮質などの脳領域が関わっていることが分かっていますが、実際には広範な脳領域で複雑な作用が生じており、その仕組みはかなり複雑です。そこで研究チームは、ネットワークのレベルで、意識が脳にどのように現れるかを探ろうとしました。

ところが問題は、意識というものが完全に内的で、他者にはアクセスできないこと。たとえば、他者と一緒に同じ絵を見ても、見るという自分の経験が、他者の経験と同じだと言うことはできません。人が世界をどう認識しているか、またそもそも意識があるかどうかを知るには、本人に直接尋ねるしかないのです。でも、言葉を発したり、表情や手の動きなどで意思を示したりする能力が失われたら、意識の有無を判別する術が無くなってしまいます。

交通事故などで脳が激しい損傷を負うと、人は昏睡状態、つまり脳が眠っていて、自分や周囲を認識できず、人工呼吸器が必要な状態に陥ることがあります。数日後には目を覚ます場合もありますが、その際も自分や周囲の出来事を認識できない「植物状態」が続く場合があります。

また、わずかに意識がある「最小意識状態」に陥るケースも。これは、脳が物事を認識はしても経験はしていない状態です。中には、意識はあるものの単に行動反応を示せないがゆえに、意識が無いと誤解される例もあります。

研究チームは、fMRI(磁気共鳴機能画像法)の技術を用いて、脳の活動に関連した血流動態反応を視覚的に測定。脳領域は活動が活発になるほど酸素消費量が増えるため、その分多くの血液を必要とします。彼らは、これらの変化を検出し、領域によってどのように異なるかを測定することで、脳全体の接続パターンを見つけられると考えました。

調査には、植物状態の患者53名、最小意識状態の患者59名、健康者47名が参加しました。一部の被験者には、「手を動かす・まばたきをする」といった行動を用いて、標準的な行動評価を行いました。

また、残りの被験者には、身体の一部を物理的に動かす代わりに、神経反応を生み出すよう脳を調節する(たとえば、実際に手を動かすのでなく、手を動かすことを想像する)ように指示し、fMRIで脳の血流動態を測定しました。

その結果、領域間のコミュニケーションに、大きく2つのパターンがあることが判明。1つは、複数の脳領域の間で生まれる物理的な接続を単に反映させたものもので、意識が無い被験者にも見られました。もう1つは、認知機能を司る6つのネットワークに分類される42の脳領域の間で交わされる、複雑かつダイナミックな相互作用で、最小意識状態の患者にはかろうじて見られました。

重要なのは、広領域の複雑な相互作用が、昏睡状態の患者にはまったく見られなかったこと。つまり、このパターンの有無を指標にすれば、本人が自ら申告したり、特定の行動タスクを行ったりすることなく、脳損傷患者に意識があるかどうかを判別することが可能になるのです。

 

fMRIによる脳画像解析は、脳損傷患者に対する治療法を決める上で、客観的バイオマーカーとして重要な役割を果たすことになりそうです。将来的には、直流電気刺激などを使って外からこうした意識の特性を調節し、意識や行動反応を失った患者の意識を復元させることも夢ではないかもしれません。

人の意識は「エネルギーのループ」であるとする説が提唱される

reference: theconversation / translated & text by まりえってぃ

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