さらば再発。 宗教やスピリチュアルが「うつ」に効くという研究
■遺伝的に高いうつのリスクを持つ人々の中で、宗教やスピリチュアルへの信仰が強い人にはうつの再発が減少する傾向が確認された
■脳の白質の「薄さ」はうつの指標とされており、信仰によって白質が「厚く」なることが分かっている
■ この研究により「宗教がうつに効く」といった短絡的な結論を出すことはできず、より長期的な検証が必要とされる
コロンビア大学などの新たな研究により、宗教的な信念すなわち「スピリチュアルな感覚」が、うつの症状を和らげてくれる場合があることが分かりました。研究では、私たちの「個人的な信条」と、脳内の「白質の厚さ」についての興味深い関連が示されています。
A diffusion tensor imaging study of brain microstructural changes related to religion and spirituality in families at high risk for depression
うつには「遺伝子」も関与
今日、うつに関しては様々な研究がなされており、私たちはその正体に近づきつつあります。たとえばある研究では、うつに「遺伝」が大きく関わっていることが示されています。両親のうちのいずれか、あるいは両方がうつであった場合、その子どもにおけるうつのリスクは平均の2~4倍にまで跳ね上がるというのです。
しかし、当然ながらうつの発症に関わるのは先天的な遺伝情報だけではありません。人々が本質的に世界をどのような視点から見ているのかといった点も、そこに大きな関わりを持ちます。今回の研究では、高い遺伝的なうつのリスクにさらされた人々の中で、宗教やスピリチュアルな概念について強い信仰がある人については「大うつ病性障害(major depressive disorder:MDD)」の再発が防止されていたことが分かったのです。
信仰で脳の「白質」の厚さが変化
研究では、MRIの技術に基づく「拡散テンソル画像」といった神経画像処理がおこなわれました。これにより、99人の様々なレベルの遺伝的なうつのリスクを持つ被験者の脳の白質を確認します。白質は脳の皮質を構成しており、脳細胞間のコミュニケーションのための回路を含んでいるものです。
過去の研究において、「薄い」白質はうつのバイオマーカー(指標)であるとされており、2014年の他の研究では、宗教やスピリチュアルへの信仰が、うつと関連するいくつかの脳の領域の皮質を「厚く」していたことを明らかにしています。
今回の研究は、それらの結果をさらに強化するものとなりました。すなわち遺伝的なうつのリスクを持ちながら、宗教やスピリチュアルに大きな信仰があった人々の脳は、遺伝的にうつのリスクが低い人々の脳に似ている傾向があったということです。
これにより「宗教やスピリチュアルがうつに効く」といった短絡的な結論を出すことはできませんが、この結果が非常に興味深いものであることに変わりはありません。今回の研究をはじめ、関連する他の研究も、さらに長い期間をかけた検証が必要となるでしょう。