人類はエボラに勝てるのか? エボラ研究の最前線・高田礼人先生に突撃インタビュー!

science_technology 2019/02/20
Credit: readyfor.jp

今月初め、北大獣医学部の高田礼人教授がエボラ出血熱治療薬開発のためのCF(クラウドファンディング)を開始したところ、Twitterの拡散がきっかけで一気に目標額を達成して話題となりました。

現在ではなんと、目標の250%以上の金額が集まっています。
詳細はコチラ↓
北大エボラ研究チームに支援が殺到、クラウドファンディングを「瞬殺」

今回はそんな時の人である高田教授に、エボラやCFにまつわる色々を突撃!

治療薬開発には最終的にいくらかかるのか? 日本にエボラが来たらどうなるのか?そして人類はエボラに勝てるのか!?独占インタビューを敢行しました!

Q1.クラウドファンディングにどこまで賭けていましたか?

―改めまして、この度はクラウドファンディング成功おめでとうございます!開始当初はどのくらいの金額が集まると考えていらっしゃいましたか?また現在集まっているこの金額に対してどのように思われますか?

私にとって初めての試みだったので、達成目標の370万円が集まるかどうか、まったく予想もつきませんでした。目標の金額に達するには、おそらく400~500人の支援が必要だと思いましたが、どういうメカニズムで集まるかのかについても、おぼろげなイメージしか無かったので、知り合いや親族へのメールやフェイスブックへの投稿をしながら、支援と情報の拡散のお願いをする程度しかできませんでした。

結局高田教授の想定の3倍くらいの支援者と支援金額が集まった(2/18)

―そしてこの金額という……

現在の状況には、正直びっくりしています。ツイッターでの拡散の結果のようです。達成目標として設定した金額は、最小限必要なデータを取るために必要なものでしたので、達成目標を超えた分で様々な実験条件での試験が可能になります。したがって、より詳細な結果が得られることになります。また、今回うまく行かなかったとしても、次の新しい候補化合物の試験のために使うこともできるかもしれません。
皆様のご支援のおかげで、薬の実用化に向けて一歩踏み出せたと感じています。

 

クラウドファンディングは現実的には意義や夢のあるテーマだったとしても、必ず目標額を達成できるというものではありません。日本人には一見して馴染みの薄い「エボラ治療薬」にここまで支援が集まったのは、もちろんTwitterの拡散もきっかけの一つですが、やはり高田教授のこれまでのご実績によるものが大きいのでしょう。

Q2.お金はあとどれくらい必要なんですか?

―今後さらに臨床試験のプロセス等で資金が必要とのことですが、最終的には今回の目標資金の何倍程必要になるでしょうか?

A.人での臨床試験には億単位の資金が必要になります。したがって、今回の数十倍ということになります。そうなると、やはり国や企業の協力が必要になってくると思います。

 

―数十倍…!ではまた、今後もクラウドファンディングをなさるご予定はありますでしょうか?

今のところまだなんとも言えません。

 

次のクラウドファンディングに関しては、まだ詳細は決まっていないようです。しかしこれだけ支援があっても、さらに数十倍の資金が必要とは…。まさに現状は「高田教授の戦いはこれからだ」。今後の展開が気になります。

Q3.エボラとって同じウイルスでもインフルとどう違うんですか?

―今回のクラウドファンディングをきっかけにエボラ感染者の人数を調べたら、メディアで報道されているエボラの凶悪さと比べ、比較的身近なインフルエンザと比べると随分少ないという印象を得ました。
先進国で爆発的に流行するインフルエンザとアフリカで流行するエボラ、2つのウイルスの違いはどういった所にあるのでしょうか?

インフルエンザとエボラでは、年間感染者数や死亡者数は比較になりません。インフルエンザの方が圧倒的に多いです。インフルエンザウイルスは呼吸器に感染しますし、病原性も弱いですから、ヒトからヒトに簡単に伝播し、受け継がれ、何十年も世界中で流行しています。またさらに今後、新型ウイルスが登場する可能性も高いと思われます。したがって、いわゆる非常に市場規模の大きい、と言われる感染症です。そういう疾病には多くの予算が投入され、製薬企業もワクチンや治療薬の開発に積極的になれます。
一方、エボラ出血熱は、アフリカで限局して、散発的に発生しています。ウイルスがヒトの間で持続的に受け継がれているわけではなく、その自然宿主(ウイルスを普段持っている野生動物)から偶発的にヒトに伝播します。いつどこで発生するかも予測がつきません。そして、致死率が高く(最も高いときで90%程度)、空気感染もしないので、ヒトの間で長期間受け継がれることは困難なのです。

 

―エボラは血清が無いまま猛毒のヘビに噛まれるようなものなんですね。

ワクチンや治療薬の開発もインフルエンザのように簡単にはいきません(インフルエンザが簡単だったと言っているわけではないのですが)。エボラウイルスは全身感染する上に、免疫応答を撹乱することが高い致死率の原因となっていて、それに対抗するには一筋縄ではいかないという事です。エボラのワクチンや治療薬の開発がなかなか進まないのは、そういうウイルスの性質に加えて、お金をかけても利益を上げる見込みが薄いことや、臨床試験の最後の段階(効き目を調べる部分)が、普段出来ない(常時発生しているものではないので)という開発上の困難、が主な原因だと思います。

 

―臨床試験にエボラの自然発生が必要とはもどかしいですね……

しかし、普段はアフリカで起きている風土病的なものとはいえ、2013-2016年の西アフリカのときのように都市部で大規模な流行が起きた場合には、他国に拡散する危険性が高いですし、バイオテロに使用される懸念もあります。エボラの克服は、先進国が進んで取り組まなければならないと思います。

 

2020年にオリンピックが開催予定でテロ対策が急務の日本にも、バイオテロ防止の観点からエボラ克服の必要性がありそうです。前回の記事にもある通り、現状日本で満足にエボラウイルスを扱える施設が無い状況であることは、我々が思っているよりずっと深刻な問題かもしれません。

Q4.もしエボラが日本に来たらどうなるんですか?

―検疫法などの予防措置はありますが、もしエボラが日本に入るようなことがあったら何が起こるでしょうか?

自動的に「・・・が起こります」という答えはありません。
検疫は自己申告とカメラによる体温のチェックだけですので、感染から発症までの数日間の間だったら、すり抜けてしまいます。また、エボラの症状には特徴的なものがありませんので、熱が出ていても、その場で(空港で)エボラだと診断することは不可能です。ただし、私達が開発した迅速診断キットを使えば、採血さえその場で出来れば、15分程度で診断できますので、陽性だった場合には、すぐに隔離する事が可能になります。

 

―15分で診断できるんですね!しかしもしすり抜けたらどうなってしまうのでしょうか…

実は今回、補足としてめちゃくちゃ詳しい「エボラ日本上陸:4つのシナリオ」をご用意いただきました。先生、ありがとうございました!どのケースもリアルすぎて怖い…。

 

シナリオ例1

筆者作成のエボラ上陸後の流れ概要図。いらすとやにはエボラウイルスの絵があるんですね…(使いました)

アフリカで感染して、入国後に日本国内で発症した場合、普通は近所の病院に行くと思います。そこの医師が、アフリカから帰国して発熱という状況で、すぐに血液検査を行いエボラ出血熱を疑った場合、血液が国立感染症研究所(感染研)に運ばれ、そこで確定診断(遺伝子を検出してウイルスの有無を調べる)をします。陽性であった場合には、その人が入国してから接触した人、全てを調べ、その接触した人が接触した人も調べ、全員を追跡することになります。
追跡できた人に対して、状況を説明し、体調が悪くなったらすぐに病院に行き、確定診断のための検査を依頼する流れになろうかと思います。同時に、これはメディアで大きく取り上げられると思うので、全国の医師が原因不明の熱性疾患で来院した患者に対して注意を払うという状況になると思います。数週間の間に、2例目3例目が出なければ、多分大丈夫だと思います。
2例目3例目の感染者が確認された場合には、その人達が接触した人、接触した人に接触した人の追跡が、1例目と同様に始まります。感染者が出ている間はこれがくりかえされます。最後の患者が確認されてから数週間、新しい患者が出なければ、終息ということになります。

 

シナリオ例2
基本的なシナリオ。いきなり医者はエボラを疑うことはないのでやはりエボラ上陸が発覚するまでに時間がかかる模様。

普通は、アフリカから帰国後に発熱、というだけで、すぐにエボラ出血熱を疑う医師は多くはないと思いますので、薬を処方して家で安静に、という事になろうかと思います。家で症状が悪化し、出血症状を示すと、血液を含む吐瀉物、唾液や便を介して家族内に感染が広がる可能性があります。その後、家族も発症して病院に行く事になり、何らかの感染症が疑われ、その時点で、血液が感染研に送られて、ウイルスの有無が確かめられます。陽性だった場合には、上と同じで、接触者の追跡が始まります。

 

診断を経て判明する以上、どの感染症でも上陸してから感染が判明するまでに時間差が生まれます。それはエボラでも同じようです。

 

シナリオ例3
一番エボラ流行に近そうなシナリオ。ただし日本では感染者に接触した人を追跡することが可能

アフリカで感染し、帰国後発熱したが、無理して出勤し、ラッシュアワーの電車の中などで嘔吐して、それに不特定多数の多くの人が触れた場合などは、かなり厳しい状況になると思います。その人が病院に行き、血液サンプルが感染研に送られ、エボラ陽性となった場合のその後は、上と同じです。血液サンプルが感染研に送られずに、原因不明の熱性疾患として処理されてしまった場合には、2例目3例目が発症してからようやくエボラ発生ということが分かると思うので、電車の中の人も含めて、接触者の追跡は相当な数にのぼります。ただ、インフルエンザウイルスのように伝播力が強くないので、感染可能性は基本的に直接接触した人に限られます。日本であれば、どうにか追跡は可能だと思います。

 

このシナリオが一番ヤバそうですね。近年無理をして病気のまま出勤するなんて話はよく聞くので現実味もある所が特に怖いです。病気のまま無理をして出勤、ダメ、ゼッタイ。

 

シナリオ例4
原因不明の熱病と診断されると早期発覚は厳しいらしい。

アフリカで感染し、帰国後発症し、そのまま誰にも感染しなければ(激しい出血症状を伴わない場合など、ウイルス拡散の確率は減りますので)、原因不明の熱性疾患として処理されると思います。その場合、死亡するにしても治癒するにしても、人知れず、日本にエボラウイルスが持ち込まれていた、という事になります。エボラではありませんが、同じ種類のウイルス(マールブルグウイルス)で、アメリカでそのような例があります。このときには、感染していたことは、病気になっているときには分からずに、治ってから、後から調べたら分かった、というものです。

 

「実は過去、ここにエボラウイルスの痕跡が!」という話が後から発覚するの、本当に怖い話とかにありがちな流れだしエボラだと本当に洒落にならないので怖いです…。

以上、ネット上では世界一詳しい(たぶん)「エボラで起こる日本のバイオハザードストーリー」でした!今のところ、日本でふつうに生活していればエボラにかかることはほぼ無さそうですが、これを知っていれば理解や予防の助けになるかもしれませんね。備えあれば憂いなしです。

Q5.人類はエボラに勝てますか?

―エボラ出血熱は、将来的に根絶できる可能性はあるでしょうか?

上に書いたとおり、普段は何らかの野生動物(エボラの自然宿主)が持っていますので、ウイルス自体の根絶は不可能だと思います。ただ、自然宿主が分かれば、接触を絶つことが可能になるかもしれませんし、ワクチン、治療薬、診断法、検査システムが確立すれば、被害を最小限に抑えることは可能になると思います。
大事なのは、1例目をすぐに診断できること。それでウイルスの拡散を防げます。そして、有効な治療薬があって治療が間に合えば、その人も命を落とさずにすみます。

 

過去に先進国でもエボラウイルスの上陸は起こっており、その頃から人口密度の高いアジアは感染拡大の起こりやすさが指摘されています。日本も例にもれず大都市の人口密度が高いため、上陸した際はより一層の警戒が必要かもしれません。

ただし教授が仰るように、根絶は不可能だとしても、有効な治療薬があればエボラを「死なない病気」へ変えることはできます。教授の研究は、人類のエボラ克服への道筋を示してくれているのです。

Q6. 読者へ一言

―もし上記の質問以外で、読者に何か知ってほしい、お伝えしたいことがありましたらご記載ください。

クラウドファンディングでご支援いただいた皆様、どうも有り難うございます。研究の成果をエボラ克服のために生かせるよう、頑張りたいと思います。

 

高田教授、お忙しい中本当にありがとうございました!

高田教授のクラウドファンディングは3月29日午後11時まで受け付けているようなので、気になった方はぜひ応援してくださいね!
致死率最大90%にもおよぶ「エボラ出血熱」治療薬開発の一歩へ(外部クラウドファンディングページへ)

written by 白大根

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