人間がホラー体験を好む理由は「闘争心」より「逃走心」!?

psychology 2019/02/16
Credit: pixabay
Point
■ホラー体験を好む人の性格特性は、新たな知的経験に積極的な態度を示す「開放性」のレベルが高いことが判明
■さらに、ホラー体験への「没入感」も恐怖心を高める一因であり、これは超自然的な現象を信じる「宗教的心理」と似ている
■恐怖心は、怪奇現象を否定する心理と肯定する心理とのバランス感覚から生まれ、動物の生存にとって不可欠なものである

「恐いけど見たい…」恐怖心があるのに、ホラー映画や心霊映像を見たくなるのはなぜでしょうか?

デンマークにあるオーフス大学のマティアス・クレイスン氏によれば、「恐怖心は動物の生存本能に固有のもの」。その上で、私たちの「恐怖感覚システム」は、恐怖現象の「肯定心理」と「否定心理」との絶妙なバランスで機能するのだと指摘しています。

研究の詳細は、1月24日付けで「Poetics」上に掲載されています。

Adrenaline junkies and white-knucklers: A quantitative study of fear management in haunted house visitors
https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0304422X18301517?via%3Dihub

恐怖心を煽る要因は、性格とスリルを欲する心理

クレイスン氏は、私たちの恐怖心を煽る要因として2つのことを挙げています。

まず、1つ目が、ホラーを好む性格特性です。同氏とその研究チームは、北米在住のおよそ1000人以上を対象に、ホラー映画や小説、お化け屋敷を好む人の性格について、「ビッグ・ファイブ」と関連づけて調査を敢行しました。

すると、ホラーを好む人は「開放性」のレベルがきわめて高いことが判明したのです。「開放性」とは、新たな知的経験に対して積極的な態度を示す性格のことをいいます。つまり、「開放性」のレベル高いことは、好奇心や想像力が豊かである証拠です。

それから、2つ目がホラー体験への「没入感」です。同氏は「スリルを欲する心理的傾向は、目に見えない超自然的な存在を信じようとする宗教的心理に非常に近い」と指摘します。映画にせよ小説にせよ、物語の主人公に自分自身を重ねることで、恐怖追体験のレベルは増幅するのです。

こうした「開放性」や「没入感」といったスリル体験への能動性が、恐怖心を煽るのに重要な役目を果たします。しかし、最も重要なのは恐怖に対する心理的なバランス感覚です。

恐怖心の鍵は、心理的なバランス感覚

要するに、怪奇現象を「否定しようとする心理」と「肯定しようとする心理」とのバランスを、心理的なバランス感覚といいます。例えば、夜中に家の外で物音がすると、「風の音か、猫のいたずらだ」と冷静に判断すると同時に、「泥棒か殺人鬼の足音かもしれない」という可能性をわずかながら考慮しているのです。

恐怖心は、ある程度事態を把握できる理性的な態度と、実際に何が起こるかは分からない感覚的な態度との間で高められていきます。実は、私たちの「恐怖感覚システム」は、現実にありそうなことよりも、非現実的な方向へと想像力を働かせることの方に重きを置くのです。

クレイスン氏は「ありえそうにないことを想像することは、身に迫る危険性を把握するのに役立つ」と説明しています。つまり、恐怖心は、動物にとって重要な生存本能であり、人間が繁栄したきっかけでもあるのです。

人間が地球上で最も強大な力を得ることになったのは、勇敢に戦う「闘争心」以上に、恐怖に駆られて逃げる「逃走心」を重要視したからだといえるでしょう。

なぜ「怖いのに楽しい」のか?ジェットコースターの心理学

reference: arstechnica / written & text by くらのすけ

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