遺伝子泥棒!? 草は他の植物の持っている遺伝子を盗んで利用していた

animals_plants 2019/02/20
Credit: Pixabay
Point
■野生の草が、他の植物から有用な遺伝子を取り込んでいることがゲノムの比較によってわかる
■遺伝子を取り込む仕組みは不明であるが、この性質は今回調べたアロテロプシス・セミアラタだけのものではない
■遺伝子組換え作物の利用に一石を投じる結果である

どうやら草は大事なものを盗んでいくようです。心じゃなくて遺伝子ですが。

シェフィールド大学の研究で、草には近くの植物から遺伝子を拝借することで、進化をショートカットする能力があることが研究により判明しました。この発見により、野生の草が競争的優位を得るために自身の遺伝子の変更を自然に行っていることが示されたことになります。研究はシェフィールド大学で行われ、「PNAS」誌で発表されています。

Lateral transfers of large DNA fragments spread functional genes among grasses
https://www.pnas.org/cgi/doi/10.1073/pnas.1810031116

わりとホイホイ遺伝子を盗む草

この仕組みを理解することで、遺伝子組み換え作物(GM作物)から、遺伝子が他の植物に伝播して、繁殖力の増した雑草「スーパーウィード」が生み出される危険を減らす助けとなるかもしれません。GM作物から除草剤耐性遺伝子を引き継ぐことで、除草剤の効かない雑草が増える危険があるのです。

ダーウィン以来、多くの進化論の根本は、親から子へと受け継がれる遺伝子に対して自然選択が働くというものになりました。しかし、今回の研究でわかったのは、草がこのルールを破っていたことです。遺伝子が親から子ではなく他の個体や細胞に広がる「遺伝子の水平伝播」によって、系統的に遠い種から獲得した遺伝子を利用することで、進化の段階を迂回しているのです。

研究を行ったルーク・ダニング博士は次のように述べています。「草は簡単に遺伝子を盗んで、進化をショートカットしています。まるでスポンジのように有用な遺伝情報を近くの植物から吸収して、競合する草に競り勝ち、通常であれば進化して適応するのにかかる何百万年という年月をかけることなく、過酷な環境で生き延びているのです」

遺伝子泥棒は一種だけではない

研究で調べたのは、アロテロプシス・セミアラタ(Alloteropsis semialata)と呼ばれるイネ科の植物で、そのゲノム配列を見ました。この植物はアフリカやアジア、オーストラリアと広く生息しており、ゲノム配列を明らかにすることで、米やトウモロコシ、キビ、大麦、竹などを含むおよそ150種類の他の植物と比較することができます。そして遺伝子のDNA配列を種間で比較した際の類似性を調べたところ、アロテロプシス・セミアラタが持っている遺伝子の中に水平伝播したものがあることを特定しました。

それでは、この水平伝播がいつ、どこで起きたのでしょうか?研究者はアジア、アフリカ、オーストラリアの熱帯および亜熱帯地域に生息するアロテロプシス・セミアラタのサンプルを集めました。

「コピー遺伝子は、この草に非常に大きな優位性をあたえ、周りの環境に適応して生き延びることを可能にしています。研究では、この性質はアロテロプシス・セミアラタだけが持っているのではなく、もっと幅広い種の草にみられることがわかりました」

自然界で遺伝子組換え技術と同じ様なことが行われていることがわかったことで、社会が遺伝子組み換え作物をどのようにとらえるか、再考をうながすことになるでしょう。また、GM作物から野生の雑草や他の作物に遺伝子がどのように逃げ出すのかを理解する助けとなることで、そういったことが起きないようにする方法を生み出すことも可能となるはずです。

次の研究目標は、水平伝播が起こる生物学的な仕組みを解明することです。

 

今回の研究で、草にも細菌のように他の種から遺伝子を拝借する仕組みがあることがわかりました。GM作物に組み込まれた遺伝子は、この仕組で自然界に広がってしまうと環境に大きく影響してしまいます。その一方で、遺伝子の水平伝播が自然に起きているとすると、遺伝子組み換え自体が自然を大きく逸脱しているわけではないことになります。技術的には、自然に起こっている遺伝子の組入の仕組みがわかれば、もっと効率の良い遺伝子改変技術が得られるかもしれませんね。

植物と窒素固定細菌との共生関係、たびたび解消されていたことがわかる

reference: Phys.org / written by SENPAI

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