この世の終わりじゃ…ロシアの町に「黒い雪」が降る

spot 2019/02/21
Credit: Strange Sounds
Point
■西シベリア南部のクズバス炭田の周辺で、黒い色の雪が降った
■大気中には一年中大量の炭塵が舞っていて、雪が降るとそれが目に見えるようになる
■炭塵に含まれる重金属やシリカは、喘息や肺炎などの健康被害をもたらす

「雪の色は?」と聞かれたら、大抵の人は「白」と即答するでしょう。そんな当たり前の事実が覆される時代が訪れそうです。

この冬、ロシアの町を真っ黒な雪が覆い尽くしました。この世の終わりさながらの光景に、住民は不安をつのらせています。これはアポカリプスじゃ…?

原因は、もちろんこの世が終わるわけではなく、西シベリア南部のクズバス炭田に掘られた露天の炭坑です。世界有数の石炭埋蔵量を誇る、2.6万平方キロメートルほどのこの一帯には、およそ260万人が暮らしています。

周辺にあるプロコピエフスク、キセレフスク、レニンスク=クズネツキーの住人は、真っ黒なインクに染め上げられた雪の吹き溜まりや、木々、氷柱などを、次々とSNSに投稿しています。その様子は、現実とは思えないほどの不気味さをたたえており、「地獄の雪もかくやあらん」と思わせるほどです。

住人の一人は、「浄化システムが無いので、塵、埃、汚れ、ススはすべて町に降り注ぎます。子どもも大人も、みんなその空気を吸っています。まるで悪夢です」と、窮状を訴えています。また、別の住人は、「子どもたちの未来が恐ろしい」とさえ語っています。

問題となった石炭工場の社長は、埃を覆うために使われていた「防御シールド」の不具合が原因だと説明しました。現在、検察が状況を調査中です。

クズバス炭田の炭坑が健康被害をもたらす危険性は、以前から指摘されていました。ロシアの環境保護団体Ecodefenseの報告によると、“the coal heart of Russia”(ロシアの石炭の中心)と呼ばれるこの地域には、2015年時点で120個の採炭施設と、52個の濃縮工場が存在したそうです。2017年には、クズバス産の石炭の約9割が英国へ輸出されています。

昨年は、ミスキー市の職員が、炭鉱から飛来する炭塵やススによる汚染を見えにくくするため、子ども向けの雪の滑り台に積もった黒い雪を白い塗料で着色するという、信じられないような隠蔽工作事件が起きました。臭いものに蓋をするとは、まさにこのことです。

他地域より平均寿命が短いクズバス

ロシア国内では実際、冬の間に黒い雪よりも白い雪を見つけることの方が難しくなっているとの情報も…。実際、大気中には一年中大量の炭塵が舞っていて、雪が降るとそれが目に見えるようになるだけなのです。

石炭の産出は、環境だけではなく、人の健康を害する危険性もはらんでいます。炭塵に含まれる重金属やシリカは、喘息や肺炎の要因になるだけでなく、肺がん・脳卒中・心臓病・呼吸器疾患とも関係しています。Ecodefenseの調査によると、クズバスはロシアの他の地域と比べて、肺結核・脳性麻痺・特定のがんの発症率が異常に高いそう。また、この地域の平均寿命は、国民の平均寿命よりも3〜4年短いことも分かっています。

 

環境や健康に対する十分な対策が講じられぬまま、先進国で使うために石炭が掘り起こされているという現状。「黒い雪」の問題は、決して対岸の火事ではありません。

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reference: motherboard / translated & text by まりえってぃ

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