chemistry

あんこの色はアントシアニンではなく「未知の色素」でつくられていた

2021.01.28 Thursday

2019.02.26 Tuesday

Point
■赤小豆の種皮から新種の色素を取り出すことに成功
■あんこの色素はアントシアニンの誤解されてきたが、未知の化学物質であったと判明
■高級な紫色の餡を作り出す方法や小豆の育種への応用が期待される

先生ッ! どうして新色素に「アンコシアニン」って名前つけなかったんですか……ッ!!

日本の共同研究グループが、赤小豆から純粋な色素を取り出して構造を特定することに成功しました。これまでの色の元になってきた色素はアントシアニンと誤解されてきましたが、今回の結果から、今までに知られてこなかった新規の物質であると判明しました。

この名古屋大学、広前大学、名城大学による研究の論文は科学雑誌natureに掲載されました。

Structure of two purple pigments, catechiopyranocyanidins A and B from the seed-coat of the small red bean, Vigna angularis
https://www.nature.com/articles/s41598-018-37641-0

日本最古のリケジョと秘密の紫色

赤飯や餡(あん)の原料に使われる赤小豆。その赤小豆の種皮色素の研究には歴史があり、実は理化学研究所の女性研究員第一号の方の研究内容でもあります。

この初代リケジョともいえる黒田チカ氏の研究報告から約85年、多数の報告が上がってきましたが、種皮色素の化学構造の特定や性質の十分な理解までは至りませんでした。それどころか、小豆の色が金時豆の色に似ていることから、小豆の色素は金時豆にも含まれているアントシアニンであると誤解されてきたのです。

しかし今回名古屋大学、広前大学、名城大学のグループが、赤小豆の種皮から純粋な色素を取り出し、分子構造を特定することに成功しました。その結果、この色素が未知の色素であることが分かり、新たに「カテキノピラノシアニンA,B」と命名されました。

カテキノピラノシアニンA,Bは、水にほとんど溶けず、強酸性〜中性環境下で美しい紫色を発色するという特性があります。弱い光で分解されてしまう性質を持つため、これまで正体を掴むことが困難でした。

さらし餡が紫色になる仕組み Credit:nagoya-u.ac

この発見により、普段食べているこし餡ができる前の段階で得られるさらし餡が紫色になるメカニズムが解明されました。さらし餡ができるまでの工程には、小豆に水を含ませる、煮る、潰す、皮を取り除く、濾す、水にさらして洗うなどの工程が存在します。途中の水の関わる工程で水溶性の他の色素が抜け落ちて無色になり、そこへ水に溶けないカテキノピラノシアニジンが餡の本体と結合することで紫色に発色するとわかりました。

高級な餡は紫色であることが良しとされているそうです。今後は小豆の品種改良や調理法によってより美しい紫色を発色する餡を作れないか、職人の技と勘頼りだった製餡の技術を科学的観点から解明できないかという点に期待が寄せられています。

ところで論文完成のお祝いは、やはり赤飯だったのでしょうか?

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reference: nagoya-u.ac / written by 白大根

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