人は「信念や道徳観」でさえ遺伝子の影響を受けていた

psychology 2019/03/04
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Point
■責任感や良心と行った道徳性向は、教育や環境による後天的なものと考えられていた
■一卵性双生児や義兄弟といった血縁の程度の異なる兄弟において、美徳の程度を調べることで遺伝の関与を研究
■美徳の形成には、環境による影響は大きいものの、遺伝による影響も存在することがわかる

人の性格は、家庭や学校、友人など周囲の環境から多大な影響を受けています。特に自分の信念や道徳観は、後天的に培ったものだという認識の人がほとんどではないでしょうか。

しかし子供の道徳性向も、親から遺伝的に受け継いでいる可能性が新たな研究で示されました。両親が子供を教育することで、責任感のある良心的な成人に育てることができると同時に、そういった特性には遺伝的な潜在要因もあることが発見されたのです。研究は「Bihavior Genetics」で発表されています。

Did I Inherit My Moral Compass? Examining Socialization and Evocative Mechanisms for Virtuous Character Development
https://link.springer.com/article/10.1007%2Fs10519-018-09945-4

人間の信じる美徳はどこから得たのか?

研究を行った学際教育指導科学者アマンダ・ラモス氏は、「美徳」とされている特性がなぜ、どのように発達するのかの議論のきっかけをつくりたいと話しています。

多くの研究で、しつけと道徳的美徳の間に関連があることが示されていますが、これまでその遺伝的な要因を調べたものはありません。ラモス氏は、「それは機会の損失である」言います。両親が子どもたちに教育して得られたと考えられている特性が、実際は少なくともその一部が遺伝によるものかもしれないからです。

兄弟や双生児などを対象に調査

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先行研究では、社会的な責務や幸福感を伴った良心といった美徳と、市民的社会参画の間に関連性が見つかっています。学校による介入によって、こういった美徳が増進されることもありますが、いつでも成功するわけではありません。ラモス氏はさらにそれを深掘りして、介入がうまく行ったり行かなかったりするのを遺伝で説明できるのではないかと考えました。

研究では、720組の兄弟のデータを使っていますが、その中には、一卵性と二卵性の双生児や、離婚で別れた兄弟と一緒に住む兄弟、異母、異父兄弟や、義兄弟とそれぞれの両親が含まれます。

様々な関連性を持つ兄弟を含むことで、美徳に影響を及ぼす遺伝的、環境的な要因を両方調べることができました。例えば、一卵性双生児は全く同じDNAを持っており、義兄弟は遺伝的バックグラウンドが異なりますが、同じ家に住み、環境を同じくしています。

血縁の深いきょうだいでより影響が強まる結果に

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まず、参加者の青年期のデータを集め、それから成人してすぐのデータを集めました。そののち、両親からの肯定的な影響、例えば素早い対応や褒めることなどと、否定的な影響、例えば怒鳴ったり対立したりなどを計測。さらに、青年期における子供の責任感と、成人してからの良心も測りました。

解析後、すべての肯定的な養育が子どもたちの責任感や良心と関係している一方で、その関係性が、血縁のより深いきょうだいで強くなっていることを発見しました。つまり、こういった美徳は部分的には遺伝的であるということです。

人としての美徳を形成するのは、しつけや教育によるものであり、すべてが環境によって決まると思われがちです。しかし、今回の結果は、こういった美徳にも遺伝が影響していることを示しています。もちろん、責任感や良心といった美徳が、DNAだけによって決まるということではありません。ただ、教育において遺伝的な要因を無視すべきではないのです。

 

責任感や良心といった美徳は、大人として身につけておくべき資質であり、生きる上で周囲の人達とうまく関係を結ぶためには重要です。しかしこういった美徳を生まれながらに身に着けやすい人と、そうではない人がいるということがわかりました。こういった、不利な人たちでも美徳が身につくように、個人個人の特質に合わせたケアが今後必要となってくるでしょう。

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reference: Medical X Press  / written by SENPAI

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