科学者がついに原子核内部の謎「EMC効果」を解明?

quantum 2019/03/05

Point
■陽子や中性子を形成するクオークの運動量が、より大きな原子核内部で低下するという「EMC効果」として知られる現象がある
■既存の加速器実験のデータを見直すことで、運動量低下を説明できる関数を導き出すことに成功
■中性子と陽子の接近による一時的な修正により、存在空間が広がることでクオークの速度低下が起こると説明できる

原子に関わるものは、つじつまが合わないことが多々あります。たとえば素粒子であるクオークは、陽子や中性子の塊の内部にとらえられると動きが遅くなりますが、計算上はそういうことがあってはならないのです。

何十年もの間、大きな原子内でクオークのスピードが落ちる現象を説明するために、物理学者たちは奮闘してきましたが、うまくいきませんでした。しかし今回、古いデータを詳しく見直すことで、この奇妙な現象を説明するための手がかりが明らかになりました。研究は、「Nature」で発表されています。

Modified structure of protons and neutrons in correlated pairs
https://www.nature.com/articles/s41586-019-0925-9

クオークの速度は原子の大きさに反比例

研究では、CLASコラボレーションとして知られる物理学研究の巨大チームが、ジェファーソン・ラボの電子加速器によって得られたこれまでの実験結果を集めてデータを見直しました。この研究の目的は、陽子や中性子を形成する基本的なユニットであるクオークが、なぜ大きな原子内では運動量が落ちるのかという問いに対する2つの説明のうち、どちらかを支持する証拠を得ることです。

この現象が最初に発見されたのは、1980年代初期のEMC実験。鉄のような大きな原子内にとらわれた原子核粒子と、水素のような小さな原子内の原子核粒子を比較することで観察されました。

「EMC効果」として知られるようになったこの効果では、原子が大きくなるにつれて、クオークは遅くなります。クオークはとてもエネルギーの高い素粒子なので、舞台を共有するようになると、それぞれが歌姫のように振る舞います。しかし、ひとたびクオークが三組になって陽子や中性子を形成すれば、クオークが核の中にあろうと、飛び出したフリーの粒子の中にあろうと、違いがあるはずはありません。

EMC効果を説明する2つのモデル

EMC効果について説明する、2つの主要なモデルがあります。1つ目は、核内のすべての陽子と中性子は修正を受けており、その修正はすべて等しいというものです。

2つ目は、異なるクオークグループが接近すると、ある種の近接関係が短時間湧き上がるというものです。多くの陽子や中性子はフリーな粒子として振る舞いますが、近接関係にあるものも中にはあり、そういったものは強く修正されるというのです。

研究では、炭素、アルミニウム、鉛、鉄の内部の陽子や中性子から跳ね返って散らばった電子のデータを解析することで、EMC効果について説明できる普遍的な関数が発見されました。この特徴は、陽子と中性子が触れ合った際に間に生じる短距離相関の頻度を元に導出されています。

量子力学の観点から言えば、この親密性は構造内での互換性のある重なりであり、これによりそれぞれのクオークグループが少しだけ自由に動き回れるようになります。そして粒子が見つかる空間が増えることで、その運動量は減少することになります。つまり、空間が広がることで粒子の運動量は下がるのです。逆に空間の制約が厳しくなると、スピードは上がります。

これをEMC効果に当てはめると、原子核が大きくなった際、中性子の数が増えるため、陽子が局所的に中性子に出会う可能性が高くなり、より修正を受けやすくなるためスピードが落ちるのです。

ただし、今回の発見によってEMC効果の謎がすべて解明されたわけではありません。ジェファーソン・ラボの追試実験で、1つの陽子と1つの中性子だけからなる重水素の核の中で陽子がどのように動くか、詳しく研究される予定です。

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reference: Science Alert / written by SENPAI

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