「歌うネズミ」が明らかにした、会話する人間の脳の仕組み

biology 2019/03/01
Credit: NYU School of Medicine
Point
■アルストン歌いネズミは、歌によってコミュニケーションを取っており、ヒトの会話で見られるような素早い応答も見られる
■このネズミを会話のモデル動物とすることで、根底にある神経回路の仕組みが研究される
■発声運動と、歌のタイミング調節は機能的に別れており、階層構造をとっていることがわかる

「歌いネズミと会話する人間」…なんだかファンタジーな字面ですが、中身は人間の脳の仕組みに言及するものです。

南国の「歌いネズミ」こと、アルストン歌いネズミ(Scotinomys teguina)は、独特な大きい声で鳴き、人間のように複雑な会話を行うことで知られているネズミです。

この歌いネズミが交わす歌から、ヒトの会話の特徴である素早い音声交換を支えていると思われる仕組みが発見されました。ネズミの研究から、ヒトの複雑な発話回路の理解に迫る探求の扉が開かれたのです。研究は、「Science」に掲載されています。

Motor cortical control of vocal interaction in neotropical singing mice
http://science.sciencemag.org/content/363/6430/983

人間と歌いネズミの複雑な「会話」のしくみ

他の人との会話を成功させるためには、相手の言葉を聴いて意味を解釈し、自らの言葉で適切に応答しなければなりません。多くの動物は音声を使ってコミュニケーションを取りますが、ヒトの会話のように、素早い言葉のやり取りをするものはほとんどいません。

その過程には、ほぼ瞬間的な「感覚による合図」と「筋肉の反応」の間の調節が必要となります。しかしその根底にある仕組みについては、ほとんどわかっていません。

歌いネズミは、中央アメリカの熱帯雨林に生息しています。競争相手と勝負しますが、すばやく交互に独特の高いピッチの歌を歌います。しかし、研究者によると、ネズミの歌は相手の歌に応答して変化し、歌っているネズミはヒトの会話で見られるような交互のやり取りを行っています。

階層化した発声と歌

研究者は、神経生理学的な手法を用いて、歌いネズミが交互に歌い合う行動を可能にする神経ネットワークを調査しました。2匹のマウスが歌い合っている間の脳と筋肉間の電気信号を追跡することで、各歌の音階を生み出すのに必要な筋肉の調整に関わっている、運動野内部の領域を特定したのです。

Credit: MICHAEL LONG

また、運動野内部で活発だった他の機能的な「ホットスポット」として、顔面口腔領域が見つかっており、すばやく正確な音声による相互作用に必要な、感覚運動変換の仲介をしていることがわかりました。

今回ネズミで見られた音の生成と、タイミング機能が分離し階層化していることが、音声による効果的なコミュニケーションを可能にしていると著者らは述べています。

今回の研究における発見は、音声によるコミュニケーションシステムの進化を理解する助けとなり、その進化が思われていたよりも早い段階で始まったことを暗に示しています。

 

ヒトよりも小さな脳を持つネズミが、ヒトの会話で見られるような素早い応答ができるというのは驚きですね。会話機能のモデル動物とされたことで、会話能力の根底にある神経回路の解明が進むものと思われます。

人間の思うままに操れる「サイボーグマウス」の技術がスゴイ…!

reference: Eurek Alert! / written by SENPAI

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