色んな分野で研究されているブラックホールって結局何なの?

space 2019/03/10
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Point
■ブラックホールは様々な分野で研究されていて、それぞれ異なった定義がされている
■哲学者が、その定義の違いについて分野横断的に分析している
■観点の多様性は健全な証拠で、観点が多様であることを認識した上で研究を行うことが重要

ブラックホールとは一体何なのでしょうか?

ミュンヘンLMU大学の哲学者エリック・キュリエル氏は、物理学者たちはブラックホールという概念に対し、自分の専門分野の視点からそれぞれ異なった定義を用いていることを明らかにしました。それってかなりカオスなのでは…?研究は「Nature Astronomy」に掲載されています。

The many definitions of a black hole
https://www.nature.com/articles/s41550-018-0602-1

通常ブラックホールは、影響の及ぶ球体内部であれば、侵入してきたすべての物体や放射を取り込んでしまう天体であると考えられています。この「影響の及ぶ範囲」は、事象の地平線と呼ばれています。この事象の地平線を境にして、物質やエネルギーの密度が無限となり、通常の物理法則が通用しなくなるのです。

しかし、論文ではこういった「特異」な状態を厳密に定義することは、非常に困難であることを示しています。

キュリエル氏はこの問題を次のように要約しています。「ブラックホールの持つ性質は物理学の広い分野において調査の対象となります。つまり光物性や量子力学、天体物理学といった分野ですが、それぞれの分野がそれぞれの個別の理論を当てはめて問題へアプローチするのです」

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キュリエル氏は哲学だけでなく、理論物理学をハーバード大学やシカゴ大学で研究しています。現在DFG(ドイツ研究振興協会)によって資金提供を受けている研究の第一の目的は、現代物理学の難問に正確な哲学的定義を与えることです。

「ブラックホールというような現象は、観測や実験が適用できない領域に属しています。研究はブラックホールが存在するという推測のもと行われており、そのため、理論物理学の分野でも珍しい推測を多少なりとも含んでいます」

しかし逆にその難しさが、哲学的な観点からブラックホールへの物理学的なアプローチを面白くしているのも事実です。

「ブラックホールへの物理学的な観点は、それ自体、存在論や、形而上学、方法論といった哲学的な問題と一体となっているのです」

多分野での「驚くべき」「目を見張る」一貫性

Nature Astronomyへのブラックホールの概念の哲学的な解析を準備している間に、著者は幅広い研究分野の物理学者と話をしています。その会話の間に、全く異なったブラックホールの定義に出会いました。しかし、重要なのはそれぞれが、専門家の関わる分野内で一貫性を持った使われ方をしていることです。キュリエル氏自身も、これらの議論を「驚くべき」「目を見張る」ことであると述べています。

天体物理学者のアヴィ・ローブにとっては、「ブラックホールは究極の牢獄で、一度入ってしまったら出てこれない」ものです。一方、理論物理学者のドメニコ・ジュリーニは、「概念的にブラックホールを空間にある物体と考えることは問題であり、それを動かしたり押し出したりできると考えることは困難である」と考えています。

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キュリエル氏にとって重要だったのは、ブラックホールの定義に幅広い多様性があるのは、前向きなきざしだということです。物理学者たちが、この現象について様々な物理学的観点からアプローチできるようになるからです。今後、これらの観点の多様性を生産的に活用するには、それぞれの違いを強く認識する俯瞰的な視点を育くむことが重要になるでしょう。

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reference: Phys.Org / written by SENPAI

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