医学の進歩!世界で2人目のHIVウィルス感染が「完治」した男性が報告される

life 2019/03/06
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Point
■あるイギリスのHIV感染者が白血病を併発、骨髄移植を受ける
■骨髄のドナーはHIVに抵抗を持つ遺伝子変異が存在、その骨髄を移植した結果HIVウィルスが検出されなくなる
■今回の治療法はすべてのHIV感染者に適用は出来ないが、将来の治療法の開発に役立つ

12年ぶりの快挙です。

イギリスの男性HIV患者が、HIV耐性をもつドナーからの骨髄移植を受けることで、世界で2番めのウィルス消滅例となりました。昔は「不治の病」と言われたHIVですが、少しずつ希望の光が見えてきたのでしょうか。

男性は3年前、HIV感染に耐性のある珍しい遺伝子変異をもったドナーから骨髄幹細胞移植を受けました。その後18ヶ月以上抗レトロウイルス薬を絶った後、感度の高いウイルス試験を実施しましたが、HIVウイルスは検出されませんでした。症例は「Nature」で報告されています。

HIV-1 remission following CCR5Δ32/Δ32 haematopoietic stem-cell transplantation https://www.nature.com/articles/s41586-019-1027-4

「ロンドンの患者」はどのようにして救われたのか?

この患者は、同様にHIVを治した「ベルリンの患者」アメリカ人のティモシー・ブラウン氏になぞらえて、「ロンドンの患者」と呼ばれています。ブラウン氏は2007年に、ドイツで今回と同様の治療を受け、現在に至るまでHIVウィルスは検出されていません。

1980年代に始まったエイズの大流行では、世界中で3500万人もの人が亡くなり、HIVに感染した人数は3700万人にも及びました。しかしウイルス研究によって、徐々に患者の病期の進行を食い止める薬の組み合わせは見つかっています。

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今回の男性がHIVに感染したのは、2003年です。2012年には、白血病の一つであるホジキンリンパ腫であると診断されています。

そして2016年になり彼のガンが悪化すると、医師たちは適合するドナーを探すことを決定。生きるチャンスは骨髄移植しかありませんでした。そして見つかったドナーこそが、HIVに耐性があることで知られる遺伝子変異として知られる、CCR デルタ32を持っている人物だったのです。

ドナーの免疫細胞が、患者の免疫細胞を攻撃する「移植片対宿主病」で苦しむ期間があるなどの副作用はありましたが、骨髄移植は比較的順調に進みました。

完治というには早すぎる?無視できない副作用の存在

治療の指揮を行ったラヴィンドラ・グプタ教授は、患者は「機能的治癒」あるいは「寛解」したと表現し、「治癒」というには早すぎると慎重です。

多くの専門家は、この治療法を全ての患者の治療法として使うことはありえないと言います。治療費が高価である上に複雑で、リスクもあります。CCR5変異を持つ北ヨーロッパに起源を持つ人達という狭いグループの中に、ドナー適合者を見つけなければならないでしょう。

専門家は、抵抗性のCCR5だけが鍵となっているのか、それとも移植片対宿主病も同様に重要であるのかははっきりとはわからないといいます。ベルリンの患者もロンドンの患者もどちらも、このHIVに感染した細胞を減らす役割も考えられる合併症を患っているのです。

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グプタ氏は、チームが今回の発見を利用してHIV治療の戦略を調査する計画です。「HIV感染患者のCCR5受容体を削除出来ないか突き止める必要があります。遺伝子療法で可能となるかもしれません。」

研究はシアトルで行われた医学会でも発表されています。ロンドンの患者は、チームに名前や年齢国籍などの詳細を明かさないようにお願いしたということです。

 

ロンドンの患者は、エイズにかかった上に白血病も患うという二重の不幸を味わってしまいましたが、それが結果的に世界的にも稀なHIVの寛解につながりました。しかしHIVに抵抗性のあるドナーを全てのHIV感染者に見つけることは不可能であるとともに、移植に伴うリスクは割に合わない可能性があり、この治療法は第一選択肢にはならないでしょう。しかし、CCR5の変異の有用性が示されたことで、すべての患者に応用可能な治療法へとつながるかもしれませんね。

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reference: The Guardian / written by SENPAI

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