まるで錦絵。超音速ジェット機が生む衝撃波を捉えた「シュリーレン写真」

technology 2019/04/22
Credit:NASA
Point
■最新型の高精度シュリーレン撮影システムにより、超音速ジェット機飛行時に生じる衝撃波の写真が撮影された
■航空機が音の壁を破ることで、航空機の前方の音波が組み合わさり大音響のソニックブームが生まれる
■ソニックブーム・燃料効率・排気・構造重量・構造的柔軟性といった効率的な飛行を阻む要因の改善に期待

この世には、目に見えない美が無数に隠れています。超音速が織りなす空の錦絵をご覧に入れましょう。

Credit: NASA Photo

アート作品とも見紛うほどの美しさを湛えたこの画像、実は「衝撃波」をはじめて捉えた写真です。

「シュリーレン写真」で衝撃波の撮影に成功

航空機は飛行の際に音波を発生させます。機体が音速(毎秒約340メートル)より遅く進む時、音波は航空機の前方にVの字を描くように広がります。

ところが飛行速度が音速を越えると、機体は前方の音波の前を進行し、音波は航空機の後方に逆Vの字を描くことに。航空機が音の壁を破ることで、航空機の前方の音波が組み合わさり、大音響の「ソニックブーム」が生じます。航空機のさまざまなパーツが生み出した衝撃波が一体化するのです。その轟といったら、まさに爆音!このため、超音速ジェット機の陸上での飛行は厳しく制限されています。

Credit: NASA

騒音問題さえ解決できれば、これまでとは比べ物にならないほどの速さでの移動が可能になります。そのためNASAは、超音速飛行時のソニックブーム除去を目指した研究を長年進めてきました。その中で撮影されたのが、この「シュリーレン写真」(Schlieren Photography)です。

“Schlieren”とは、ドイツ語で「筋」のこと。音波の「筋」を映し出すこの技術は、ドイツの物理学者アウグスト・テプラーが1864年に開発しました。今回これほど鮮明に衝撃波の姿を捉えることができたのは、最新型の高精度シュリーレン撮影システムのおかげでした。

タイミングこそ命!敏腕パイロットも苦心したハイレベルな編隊

写真は、エドワーズ空軍基地から飛び立った2機のT-38を、撮影システムを搭載したB-200機が見下ろすかたちで撮影されました。

対になった2機のT-38は、わずか9メートルほどの間隔を空けた編隊で超高速飛行。高低差はたったの約3メートルでした。とはいえ、厳しい訓練をくぐり抜けた米空軍パイロットにとっては、これくらい朝飯前です。

ところが、本当の難題はもう一つ。B-200は高度約9000メートルを飛行しており、約610メートルの高度を低空飛行するT-38との距離が、従来の画像システムでは撮影不可能なほどに離れていたのです。しかも2機のT-38は、B-200の真下を足並みを揃えながら飛行し、かつ同じ瞬間に超音速に到達しなければなりません。そのうえ撮影システムの記録時間はわずか3秒ほど…。タイミングこそが命でした。

最新型撮影システムが捉えた衝撃波の「相互作用」

Credit: NASA

別の写真では、後方のT38から出る衝撃波の筋が相互作用により歪んでいる様子を見ることができます。これは、前方のT38に後続して飛行しているため、衝撃波の形成の仕方が異なるからです。

最新型のシュリーレン撮影システムの特徴は、従来より視野角レンズが広く、フレームレート(1秒あたりに書き換えられる画像の数)が毎秒1,400と高く、データ保管速度が速いこと。これにより航空機の位置関係を正確に捉え、音波を詳細に観察することができました。

また、航空機B200の方にも、いくつかの改良が加えられました。従来は撮影システムを航空機に設置し、作動させるまでに1週間以上を要していましたが、今回はわずか1日でそれが可能になりました。

低ソニックブーム実現で、陸上での超音速飛行が認められる日も近そう

NASAは、ある時は風洞を用い、またある時は太陽を背景にして音波を映像化するなど、手を変え品を変えながら低ソニックブーム超音速飛行の研究を行ってきました。今回撮影されたシュリーレン写真は、そうした試行錯誤に革命をもたらすものになりそうです。

ソニックブームだけでなく、燃料効率・排気・構造重量・構造的柔軟性といった効率的な飛行を阻む要因の改善にも活かせる本研究。集められたデータは世界中の規制機関で共有され、新型航空機の設計に活用される予定です。

ロッキード・マーティンX-59 Quiet Supersonic Technology / Credit: NASA

たとえば2021年の完成を目指してNASAが開発中の「ロッキード・マーティンX-59 Quiet Supersonic Technology」は、低ソニックブームが特徴。もし成功すれば、陸上での飛行も承認される見込みです。

大空いっぱいに目に見えない錦絵を描きつつ、航空機が音よりも速い猛スピードで頭上を駆け抜ける日は、そう遠くなさそうです。

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reference: universetoday / translated & text by まりえってぃ

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