ホワイトホールがどのように形成されたかは謎
ですが、ホワイトホールが実際に観測されたことはありません。物理学者たちは宇宙にホワイトホールは存在できないのではないかと考えていて、その理由もいくつかあげられています。
大きな疑問の一つは、どのように形成されるのかというものです。ブラックホールの形成については納得のできるモデルがあります。しかし、ホワイトホールを作るために宇宙の時間を巻き戻すことは、不可能に思えます。
まず、特異点から初めてそれを巻き戻してみると、それは物質を吐き出し続け、最後にそれ自身が星へと生まれ変わります。それには、エントロピーの減少が必要なはずで、熱力学第2法則に違反します。
特異点から考え始めるのは得策ではなさそうです。
「特異点を実際の宇宙に生まれたとさせる唯一の方法は、はじめから存在したとすることです。宇宙の形成がすでに存在した特異点とともにあった必然性をなんとかして導くのです。しかし、宇宙がすでに存在した特異点とともに始まったことを示す理由は全くありません。もしそうであったなら、おかしなことになります」と天体物理学者カレン・マスターズは言います。
とりあえずここでは、そういったことを無視して、ホワイトホールがどこかで生まれたと仮定しましょう。数学によると、ホワイトホールを含む時空内に物質はありません。その領域に物質が入ると、それがどんなに小さな粒子であったとしてもホワイトホールを保持することはただちにできなくなります。
なので、もしホワイトホールが今までに存在したとしても、おそらく急速に消えていっただろうと思われます。もし宇宙に最初からホワイトホールがあったとしても、地球上の生命が原始の海から湧きいでる前の、数十億年昔にはかき消えてしまっているでしょう。
しかし、現在ホワイトホールは純粋に理論上の存在なのですが、ブラックホールもつい最近になるまでは、理論上の存在に過ぎませんでした。