仮説は数あれど、現段階では数学的な可能性にとどまっている
実際、科学者たちがホワイトホールの候補として挙げる天体イベントもあります。それは、ガンマ線バーストです。宇宙で最も明るく、最もエネルギーをもったイベントで、ほんの10秒の間に太陽が放射する100億年分のエネルギーを放射します。
ガンマ線バーストは残光を伴いますが、それは、星の爆発によって作られることを示しています。2017年にはこの現象が起こっているのが確認されていますが、それは2つの中性子星の衝突によって引き起こされたものです。
しかし、2011年には二人の天体物理学者が、ガンマ線バーストの持つ普通でない特徴はホワイトホールであることを示しているのかもしれないと提唱しています。
一方NASAの天文学者はブラックホールの形成プロセスである可能性のほうが高いと考えており、実際にはホワイトホールであるという可能性は極めて低いと言えるでしょう。
もっとぶっ飛んで見えるアイディアもあって、それはビッグバンそのものがホワイトホールであったというものです。このアイディアも数学的に探求されていますが、理論上にとどまっています。
ビッグバンという用語そのものが、誤解を生んでいるのかもしれません。現在の主要な理論によれば、宇宙は一つの点から爆発的に現れたのではなく、存在を膨らませたもので、星間物質がイオン化し光が現れるまでは暗闇の中で5億年もの間あまり広がっていません。ホワイトホールのモデルとは全く異なっているのです。
さらなる説としては、ホワイトホールはブラックホールの寿命がつきた後に変化したものであるという仮説があります。
ブラックホールの寿命は極めて長く、その進化がおきるまで宇宙が存続していない可能性があります。もしくは私達が目にする前に消えているかもしれません。あるいは、出来ているけれど非常に小さい原始ブラックホールから進化したもので、現在の暗黒物質を形成しているかもしれません。
これらはすべて数学的な可能性であり、私達が実際に生きている宇宙ではまだ観測されてはいません。
もしホワイトホールが見つかったとすれば、宇宙に関する理解を真剣に考え直す必要があることになりそうです。そう考えるとワクワクしてきませんか?