初期宇宙に超大質量ブラックホールが83個発見される

space 2019/03/15
credit:image of quasar by courtesy of Yoshiki Matsuoka
Point
■すばる望遠鏡と取り付けられたHSCによって、遠くにある暗いクエーサー候補が多数見つかる
■3つの大型望遠鏡でスペクトルを調べた結果、83個の超大質量のブラックホール由来のクエーサーを特定
■130億光年の距離にある初期宇宙の超大質量ブラックホールの密度はギガ立法光年あたり1つ

こんなに早い時期からブラックホールがあったとは…。

宇宙の年齢の10%の時期に当たる遠い宇宙。その初期宇宙に、超大質量ブラックホールによって引き起こされたクエーサーを83個発見しました。クエーサーとは、非常に離れた距離で極めて明るく輝いているため、光学望遠鏡では内部構造が見えず恒星のような点光源に見える天体のことを言います。

発見したのは、日本と台湾、プリンストン大学の研究チーム。研究は5つの論文にまとめられ、「The Astrophysical Journal」と「Publication of the Astronomical Observatory of Japan」に掲載されています。

Discovery of the First Low-luminosity Quasar at z > 7
https://iopscience.iop.org/article/10.3847/2041-8213/ab0216/meta

初期宇宙で形成されたたくさんのブラックホールとその影響

ビッグバンからそれほど経っていない時期に、これほどの質量を持つ天体が形成されたのは驚くべきことです。「初期宇宙でブラックホールが形成できることや、それがよくあることだったとわかったことは、私達の宇宙モデルに突きつけられた挑戦です」と、著者の一人、プリンストン大学のマイケル・ストラウス教授は述べています。

この発見によって、宇宙初期の発見されたブラックホール数がかなり増えたことになり、また、宇宙史の早い時期にはよくあることだったということが初めて明らかになりました。加えて、宇宙初期の数十億年に存在したガスの物理的特性にブラックホールが及ぼした影響について新たな見解が得られました。

超大質量ブラックホールが発見されたのは銀河の中心で、太陽質量の数百万倍、ものによっては数十億倍もの質量を持ちます。たくさん存在しているものの、最初に形成されたのがいつなのか、そして、遠くの初期宇宙にどれだけ存在しているのかはまだわかりません。超大質量ブラックホールが見つかるのは、ガスの流入が増加して、「クエーサー」として輝き出したときだけです。

先行研究で見つかっているのは、稀に見られる最も明るいクエーサーで、最も質量の高い超大質量ブラックホールと言ってもいいでしょう。新たな研究では、光の弱い大量のクエーサーのうち、今日の宇宙で見られる多くのブラックホールに匹敵する質量を持つものが精査されました。

初期宇宙の再イオン化に必要な膨大なエネルギーはどこからもたらされたのか

研究チームが使ったのは、日本の国立天文台が所有するすばる望遠鏡に取り付けられた「ハイパー・シュプリーム・カム(HSC)」です。HSCは画角が広く、満月の7倍に匹敵する1.77度の視野角をもっており、それが、世界最大級の望遠鏡に取り付けられています。HSCのチームは、5年間に渡る望遠鏡の稼働時間で300夜のデータを調査しています。

チームは感度の高いHSCのデータから、遠くにあるクエーサーの候補を選び出しました。次に、3つの望遠鏡、すばる望遠鏡とカナリア大望遠鏡、ジェミニ南望遠鏡を使ってクエーサー候補のスペクトルを得るためにチームを組んで集中観測を行いました。その結果、今まで発見されていなかった83のクエーサーが発見されました。

今回の調査領域内ですでに発見されていた17のクエーサーと合わせて、超大質量ブラックホールがギガ立法光年当たりに1つ、つまり一辺が10億光年の立方体当たり1つの超大質量ブラックホールが存在することがわかりました。

研究で見つかったクエーサーのサンプルは、地球から130億光年にあります。つまり130億年昔に存在したものを見ているということです。ビッグバンは138億年前に起きていますので、宇宙が生み出されて8億年後にはこれらのクエーサー、あるいは超大質量ブラックホールが現れていたことになります。

よく知られている説によると、宇宙に存在する水素は中性だったといいます。それが、ビッグバンの後、数億年で星や銀河、超大質量ブラックホールが生まれ始めた時期に、陽子と電子に分離する「再イオン化」が起きたとされます。それは、宇宙の歴史の上では道標となるものですが、再イオン化を引き起こすために必要な膨大なエネルギーがどこからもたらされたのかはわかっていません。

説得力のある仮説によると、初期の宇宙には現在発見されているよりも遥かに多くのクエーサーがあり、それらの放射が統合されることで、宇宙の再イオン化が起きたとされます。

最新のすばる望遠鏡とHSCによって新たな研究が可能になった

しかし、観測できたクエーサーの数では、説明が合いません。見つかったクエーサーの数では、再イオン化を説明するには数が少なすぎるのです。そのため、再イオン化は別のエネルギー源によって引き起こされたと考えられます。おそらくは、若い宇宙で形成され始めた多くの銀河かもしれません。

credit:Subaru Telescope, national astronomical observatory of japan

新たな研究が可能になったのは、最新のすばる望遠鏡とHSCのおかげです。「私達が見つけたクエーサーは、現在あるいは将来の後続研究にとって興味深い天体となるでしょう。理論モデルの予測と、観測された数密度や輝度分布を比較することで、超大質量ブラックホールの形成や進化について知ることもできるでしょう」と愛媛大学の松岡良樹教授は言います。

現在までに達成できた結果を元に、チームはもっと遠くにあるブラックホールが見つかることを期待しており、宇宙で最初に超大質量ブラックホールが現れた時期を知りたいと願っています。

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reference: Eurek Alert! / written by SENPAI

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