飢えそうになった細菌は「しっぽ」を切り離して生き延びる

biology 2019/03/27
credit:pixabay
Point
■細菌には、移動のための鞭毛をもった種類のものもいる
■飢餓状態になった際に鞭毛を切り離すことで、エネルギー消費を抑えて生き延びようとする細菌がいることを発見
■排出された鞭毛には破壊の跡はなく、抜けた穴は栓で埋められることから、この行動は意図的なもの

まるでトカゲのしっぽのようです。

栄養が危険なレベルにまで下がった時、ある種の細菌が、しっぽを切り離すという思い切った方法をとることが発見されました。

その細菌はしっぽのような鞭毛を使って、液体中や私たちの体の中を泳ぎ回ります。「PLOS Biology」に掲載された新たな研究によると、細菌は飢餓状態におちいると鞭毛を排出して、動けなくなる代わりにエネルギー消費を抑えることで生き延びるようです。驚くほど思い切った方法ですね。

研究者によると、こういった細菌の行動が観察されたのは初めてのこと。

 

偶然の発見

偶然の発見は、コレラ菌を含む有害な細菌グループの、鞭毛を動かすモータータンパク質の詳細な画像データを集めているときにもたらされました。モータータンパク質というのはアデノシン三リン酸の加水分解によって生じる化学エネルギーを運動に変換するタンパク質のことです。

細菌の細胞膜にあるモーターの格納部分を見ていたのですが、そこにはモーターも鞭毛も見当たりませんでした。それには2つの可能性が考えられました。一つは、形成過程にある鞭毛複合体の画像を見ていたというもので、もう一つは解体されたものを見ていたというものです。

credit: Morgan Beeby
γ-proteobacteria eject their polar flagella under nutrient depletion, retaining flagellar motor relic structures
https://journals.plos.org/plosbiology/article?id=10.1371/journal.pbio.3000165

筆頭著者のインペリアル・カレッジ・ロンドンのジョージー・フェレイラは、次のように述べています。「実験を開始する前は、見ている細菌がモーター鞭毛複合体の形成過程にあるものだと考えていました。しかし驚いたことに、その反対であることがわかりました。細菌は鞭毛を排出しただけでなく、空いた穴に栓を詰めたのです。つまり、この行動が意図されたものであったことが示されたのです」

細菌は動き回るために鞭毛を使っており、食中毒をおこすカンピロバクターにいたっては、厚い腸の粘液を泳ぐことさえします。しかし、鞭毛を作ったり動かすには多くのコストがかかる上、生きている間作り続けられるため多くの資源が必要となります。

研究チームは、細菌が栄養の不足した環境に置かれると、媒体中に鞭毛を排出することを発見しました。捨てられた鞭毛は完全なもので、モーターに接続する際のアダプター部品もついたままでした。つまり、根本から完全に排出されたものであり、破壊されたものではなかったのです。

細菌の計算的で意図的な行動

共著者のモーガン・ビービィ博士は、「この細菌の行動が意図的であるのは明らかです。それは、凍傷によってつま先や指を失うのとは異なります。それは、計算された上で行われている行動で、映画『127時間』で登山家のアーロン・ラルストンが岩の下から脱出するために腕を切り離したようなものです」と言います。

細菌が栄養が不足すると、泳ぎがゆっくりになることは観察されていましたが、エネルギーを節約するために、鞭毛を完全に放棄することが観察されたのは初めてです。

有害な細菌が鞭毛を排出する仕組みを解明すれば、強制的に放出ボタンを押す新しい薬の開発につながると、チームは述べています。

ビービィ博士はまた、細菌が鞭毛を排出しその穴にふたをするという明瞭な仕組みを進化させた一方で、その過程がいかに非合理的で乱雑な進化になり得たかを示していると、述べています。「進化はきちんと整理されたものではありません。細胞膜の内側に残されたモーター構造は、ドアを閉じた細菌にとってある種のガラクタになります。賢い解決法ではない一方で、これらのガラクタに害はありません」

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ある種の細菌には、緊急時に鞭毛を切り離す、パージボタンが付いているようです。空いた穴に栓を忘れないところも抜かりないですね。細菌が実は超進化変形ロボだったというお話でした。

死にかけた細菌は他の細菌を生かすために驚きの行動に出ると判明

reference:  Phys.org / written by SENPAI

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