宇宙に反物質が見当たらない理由の一つが初めて確認される

quantum 2019/03/22
Credit: depositphotos
Point
■物質と反物質は接触すると対消滅して消えてしまうので、現在の宇宙に物質があふれているのは、この2つの間に非対称性があるからだと考えられる
■大型ハドロン衝突加速器のデータから、D0中間子と、反D0中間子の崩壊の様子を調べて比較した結果、0.1%の違いを発見
■チャームクォークでの非対称性が見つかったのは今回が初めて

どんどん謎に近づいてる感…。

宇宙にある物質には、素粒子の電荷などの性質が全く逆である「反物質」が存在します。物質と反物質は衝突すると対消滅してしまいますが、私たちの宇宙はこうして存在しています。なぜこの宇宙で物質が勝利したのかは、長年の謎です。

しかし今回、その謎の一端に迫る研究が発表されました。

シラキュース大学の物理学者たちが、チャームクォークを含む素粒子において、物質と反物質が「異なった崩壊」をすることを確認したのです。こういった非対称性は、ストレンジクォークとボトムクオークによる素粒子では観察されていましたが、チャームクォークでは初めてとのこと。

Discovery of CP violation in charm particle decays
http://lhcb-public.web.cern.ch/lhcb-public/Welcome.html#CPVcharm

物質の勝因は何なのか?

ストーン氏と素粒子物理学(HEP)研究グループは、D0中間子と反D0中間子が、安定した副生成物へと変化する様子が異なっていることを、99.999%の精度で計測することに初めて成功。中間子というのは、1つのクォークと1つの反クォークが、強い相互作用で結びついた素粒子を指します。

この発見は、標準模型を超えた物理学を示している可能性があります。しかし理論研究が今回の観測を簡潔に説明するまでは、まだ時間はかかりそうです。

宇宙を形作っている基礎構成物 / Credit: KEK

物質を形成する素粒子にはすべて、対応する反素粒子があります。全てにおいて同一ですが、電荷だけが逆になった素粒子です。水素原子と反水素原子の精密な研究によって、それらが小数点以下数十億桁という精度で一致していることが示されています。

そして物質と反物質が接触すると、いずれも消滅してエネルギーの爆発が起こります。この反応によって起きたとされているのが、138億年前のビッグバンです。私たちの宇宙に反物質がほとんど存在しない理由も、そこに隠れています。

宇宙誕生時に物質と反物質が同じ量あって爆発したとすれば、純粋なエネルギー以外宇宙には残っていないはずですが、そういったことが起きていないのは明らかです。

チャームクォークによる初めての発見

今回の研究においてストーン博士は、大型ハドロン衝突加速器のLHCb実験グループと共に、物質と反物質の間にあるわずかな違いを探していました。

そこで使用されたのが、世界で最も強力な粒子加速器であるCERNの大型ハドロン衝突加速器です。LHCの出力が上がるほど、衝突で形成される素粒子や反素粒子の質量も上がります。

加速器実験によって生み出された素粒子は、崩壊してさらに安定した副生成物へと変化します。クォークには6つのタイプが存在しています。通常2つを1セットとして、アップ/ダウン、チャーム/ストレンジ、トップ/ボトムです。各対は対応する質量を持ち、分数で表される電荷を持ちます。

Credit: depositphotos

HEPが今回焦点を当てたのはチャームクォークです。チャームクォークは比較的高い質量を持ちますが、存在するのは束の間で、すぐにより安定した粒子へと崩壊します。

今回研究したのは、同一の素粒子による異なった2つの形態のD中間子です。一つは、チャームクォークと反アップクオークからなります。もう一つは反チャームクォークとアップクォークからなっています。

LHCのデータを使って、2つの形態の中間子を見つけ、それらの粒子が副生成物へと崩壊した回数を何千万回と数えました。

これら2セットの素粒子の崩壊の比率は、同一でなければならないはずですが、2つの比率に0.1%の違いが現れることを発見。つまり、チャームフレーバを持つ物質と反物質粒子は、完全に互換性があるわけではないのです。

素粒子は外見上は同じに見えますが、内側では異なったふるまいをしています。それが、反物質の謎の一つでしょう。

 

物質と反物質が異なる振る舞いをするという考えは新しいものではありません。過去の研究では、ストレンジクォークや、ボトムクォークで同様の確認が取れています。今回の研究が新しいのは、チャームクォークで初めて非対称性が見つかったことです。ストーン氏も最後に、「歴史書に残る発見の一つ」だと、述べています。

「ビッグバンは起きていない」。物理学者が宇宙誕生前の痕跡を探る!

reference: Phys.org / written by SENPAI

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