道徳的な神が出現するターニングポイントは「人口100万人」だと判明

history_archeology 2019/03/24
ギリシア神話の海と地震を司る神ポセイドン / Credit: pixabay
Point
■複雑な社会が形成された後で、道徳的な神への信仰が生まれたことが示された
■一般的に、100万人以上の規模の共同体が形成された後で、道徳的な神の概念が生まれる
■共同体の規模が大きくなると「匿名性」が増すため、全知全能の神の監視のもとで社会の秩序が維持される

「わたしは怒りに満ちた懲罰をもって、大いなる復讐を彼らになす。わたしが彼らにあだを返す時、彼らはわたしが主であることを知るようになる—」

旧約聖書に登場する神は、時に怒りに満ちた存在として描かれます。悪者を懲らしめる超自然の力は、キリスト教に限らず多くの現代宗教で中心的な役割を果たしています。では、複雑化した社会と、悪者に罰を与える神は、どちらが先に登場したのでしょうか?

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慶應義塾大学の人類学者パトリック・サベジ氏らによる最近の研究で、初めに複雑な社会が形成され、そこに暮らす人々を共通の強い力の下で団結させるために、こうした神々の信仰が始まったことが示されました。

Complex societies precede moralizing gods throughout world history
https://www.nature.com/articles/s41586-019-1043-4

道徳規範と社会の複雑性の相関関係

古代人はしばしば、雷などの自然現象を超自然の力によるものだと考えました。ですが過去数千年の間に、宗教もまた、道徳規範を説明するために超自然の力を利用してきました。たとえば、エジプトの太陽神ラーは、人々の現世での行いに応じて、死後の世界における運命を決める存在でした。

エジプトの太陽神ラー/ Credit: fi:Käyttäjä:kompak

道徳規範の誕生と社会の複雑化の相関関係は、従来の研究でも指摘されてきました。見知らぬ者同士が身を寄せ合って形成された大きな共同体では、人々の協力があってこそ社会の秩序が保たれるため、「超自然の力による裁き」の概念が求められます。ところが、「道徳が先か?複雑な社会が先か?」という謎に対する答えは、諸説存在します。調査地域が限られ、社会の複雑性を評価するための詳細な情報に欠けていたことが、その要因です。

「人口100万人」を基準に道徳的な神の信仰が誕生

そこでサベジ氏らは、旧石器時代から産業革命までの人類史に関する知識を集積したデータベース”Seshat: Global History Databank”を用いて、これまでに無く包括的で、かつ詳細な情報を漏れなく取り込んだかたちでの調査を行うことにしました。

対象になったのは、世界30地域から集めた、過去1万年間に及ぶ414の社会。これらの社会の複雑性と道徳的な神の関係を分析しました。社会の複雑性の計測には、最大集落の規模・公式な法典の有無などの51の指標が用いられました。また、道徳的な神の存在を測るのには、「自己中心的行動を監視・処罰する超自然の力の概念があるか?」などといった4つの指標が用いられました。

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その結果、道徳的な神の信仰は、社会の複雑化が進んだ後に生まれることが判明。一般的に、100万人以上の規模の共同体が形成された後で、道徳的な神の概念が生まれることから、サベジ氏は「人口100万人」を普遍的なターニングポイントだと推測しています。

社会における宗教の「機能的役割」

サベジ氏らの調査結果から、世界史全体を通じて、宗教が「社会を安定させる・人々に強力を促す」といった機能的役割を果たしていることが分かります。狩猟社会のようなごく小さな共同体の中では、人々はみな顔見知りで、行動をお互いに監視しあうことができます。

ですが、共同体の規模が大きくなると、その「匿名性」が増すため、誰を信用すべきかが分かりにくくなります。そこで登場するのが、すべてを支配する全知全能の神への信仰です。強力な監視者のもと、人々の倫理観が保たれ、社会の安定が維持されるというわけです。宗教と社会の因果関係が、いかに深く、地域や時代に関係なく普遍的であるかが分かりますね。

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サベジ氏の説は説得力がありますが、その一方で、「道徳的な神への信仰が生まれると、社会がさらに複雑になる」と考えることも可能ではないでしょうか。結局のところ、「鶏が先か、卵が先か」という話になってしまいますが、宗教と社会が密接に結びつきながら相互作用を繰り返してきたことは確かです。

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reference: livescience / translated & text by まりえってぃ

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