野生の科学者。一般人が謎の「紫色のオーロラ」を発見、解明へ手助け

science_technology 2018/03/15
Credit: Krista Trinder

夜空を彩る幻想的な光であるオーロラ。その詳細は未だに謎が多く、様々な調査がなされています。今回カナダで観測されたこのオーロラは、どうやら通常のオーロラとはちょっと違うようです。

2016年7月、カナダ在住のIT技術者であるノーニー・ブラーサ氏が子どもとオーロラを眺めていると、オーロラに似た紫色の光が空に出現しているのを発見しました。知識がなければ見過ごすところですが、ブラーサは10代の頃から30年ものあいだ北極の夜空を観察していた、大の天文学好き。すぐに紫色の光がただのオーロラとは違うことに気がついたのです。

その後ブラーサやその他の民間の科学者たちは、ネット上や科学者チームに紫色の光についての情報を共有しました。この紫の光は、彼ら「市民科学者」によって「スティーブ」と名付けられ、14日に学術雑誌「サイエンス」で論文が公開されました。

New science in plain sight: Citizen scientists lead to the discovery of optical structure in the upper atmosphere
http://advances.sciencemag.org/content/4/3/eaaq0030

 

紫の光は「オーロラとほぼおなじ原理でも詳細不明」


The Aurora Named STEVE / NASA Goddard

「種類の違うアイスクリームのようなものだ」とNASAのリズ・マクドナルド氏がいうように、実はオーロラとスティーブはほとんど同じような原理で発生しています。

オーロラは一般的に楕円形で、主な光の色は緑や青、そして赤色です。しかしスティーブは紫色で、波打つ緑色の柵状の光と共に現れます。スティーブの出現時間は20分から1時間ほどで、柵状の光はスティーブの出現時と終わりに現れます。

オーロラは、太陽からのプラズマ粒子と地球の磁力線が相互に作用して発生します。しかしスティーブは、通常のオーロラよりも低い緯度で発生し、異なる磁力線を通ります。これは荷電粒子(イオン化した原子や、電荷を持った素粒子)が地球の赤道に近い磁力線とつながっているからで、スティーブがカナダ南部でよく観測されるのはこのためです。

またスティーブは、高緯度のオーロラ地域で観測される通常のオーロラと、常に同時に現れます。しかしオーロラとスティーブを引き起こす地球付近の宇宙空間では、どのような現象が起きているのか正確にはわかっていません。研究者は、スティーブが高緯度オーロラ地域と低緯度オーロラ地域の間を化学的、物理学的につなぐものの存在を導き出す唯一の視覚的な手がかりだと述べています。

Credit: NASA Goddard’s Conceptual Image Lab/Krystofer Kim

地球と宇宙、双方向からの観測が解明のカギ

スティーブを観測したのはブラーサ氏だけではありませんでした。

ブラーサ氏が広範囲の空を撮影できるオールスカイ・カメラを用いてスティーブを観測していたとき、実は欧州宇宙機関の衛星機が同じ場所を通過しているスティーブを宇宙から観測しました。初めて、地球と宇宙から同時にスティーブが観測された瞬間です。科学者たちは、名前こそありきたりなスティーブが、解明困難な地球の磁力の働きや、宇宙にある荷電粒子の相互作用といった問題を解決する大きなカギになるかもしれないと語っています。

このように、双方向からのアプローチによってスティーブをより深く理解することできますが、地球と宇宙、両方向から同時にスティーブを観測する機会はめったに訪れません。衛星機は90分周期で地球の周りを回り、スティーブは特定の場所に、長くても1時間しか現れないからです。結局、スティーブを捕まえることは我慢と確率のゲームになります。

このように、スティーブの謎を解明することは決して簡単なことではありません。しかし発見者のブラーサ氏は希望を持っています。

「私たちの目撃レポートに基づいて科学者たちがデータを検証し、協力しながらスティーブの謎を解明していければとても嬉しいです。スティーブは知れば知るほどわからないことが増えていく。こんなにエキサイティングなことはないですね」

 

via:Phys.org/ translated & text by Nazology staff

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