生涯現役じゃ。87歳の老人でも「神経新生」が行われている証拠が見つかる

life 2019/03/26

Point
■ヒトの脳細胞は、成人した後でも新生できることがわかっており、海馬の歯状回では顕著
■87歳までの亡くなられた方の海馬を調べたところ、神経新生の痕跡が確認できた
■アルツハイマー病患者では、神経新生が損なわれていることがわかる

歳をとったからといって、諦めることはないんです。

新たな研究によると、人の脳細胞は高齢者であっても新たな神経を作れるんだとか。それも、90歳近くの老人であっても可能のようです。これは元気付けられるニュースですね。発見は、「Nature Medicine」で発表されています。

Adult hippocampal neurogenesis is abundant in neurologically healthy subjects and drops sharply in patients with Alzheimer’s disease | Nature Medicine
https://www.nature.com/articles/s41591-019-0375-9

神経新生が多く行われるのは、胎児の時期や出産の時期です。多くの神経は、成人期にはすでに形成されていると言えるでしょう。なので、神経細胞は大人になってからは増えないと考えられていました。

しかし1960年代、その常識が覆されます。成熟個体でも、神経細胞が新しく生まれている哺乳類が発見されたのです。そして1990年代終わりには、人の海馬においても神経新生が起こってることが発見されました。

しかし、成人における神経新生の仕組みや、何歳までそれが起こっているのかを確かめるのは簡単ではありません。生きた人間の脳を解剖するわけにはいきません。そこで研究者たちが注目したのが、すでに亡くなった人の脳です。

高齢者に神経新生のサインを発見

マドリード自治大学でおこなれた新たな研究では、亡くなられた方々の海馬を解剖して詳しく調べることで、神経新生の証拠を探しています。研究の本来の目的は、海馬の神経再生によってアルツハイマー病などの病気を治療できる可能性がないかを調べることでした。

詳しく調べられたのは、海馬の歯状回と呼ばれる部分の細胞です。研究には43歳から87歳までの13名の方の遺体が使われました。死因は、ガン、脳卒中、敗血症などで、死亡の際には神経は健康だったと考えられています。

Credit: depositphotos

では、死んでしまった細胞からどのように神経新生の証拠を見つけたのでしょうか。その鍵は、ダブルコルチンと呼ばれる、初期の神経で多く見られる分子です。この分子が多く発現している細胞は、神経新生がおこって間もないはずです。

詳しく調べた結果、90歳近くになる老人においても、何千ものダブルコルチンをもった細胞が歯状回で発見されました。若い人のほうがダブルコルチンをもった細胞は多く、年齢とともになだらかに減っていきます。また、ダルブコルチンの量から判断して神経の成熟度にも多様性が見られたことから、歯状回での神経新生が老人においても存在すると考えることができます。

アルツハイマー病では、神経新生が損なわれていた

次に、52歳から97歳までの、アルツハイマー病でなくなった患者の歯状回を調べました。すると、病期の進行とともに、ダブルコルチンをもった細胞が急激に減っていることがわかりました。

老化によって、ダブルコルチンをもった細胞は緩やかに減っていきますが、アルツハイマー病のように急速には減りません。

つまり、アルツハイマー病は、老化によって神経新生が減るために起こるわけではないのです。何らかの別の仕組みがあって、神経新生能力が損なわれていると考えられます。

さらに、アルツハイマー病の進行を示す線維性の凝集体や、老人斑が深刻化するよりも先に、神経新生は悪影響を受けます。つまり、メスや針を入れることなく、神経新生の異常を検査できるようになれば、アルツハイマー病を早期に発見することが可能となるのです。

 

90歳を超えても元気で、記憶もはっきりしているおじいちゃん、おばあちゃんはいますよね。神経新生ももしかしたら、死ぬまで続くのかもしれません。痴呆症のない明るい老後のためにも、研究者たちには頑張ってもらいたいです。

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reference: Science Alert / written by SENPAI

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