この巨大さで単細胞生物だったのか…。「海ぶどう」の全ゲノム配列が解読される快挙

animals_plants 2019/03/29

Point
■沖縄特産の海ぶどうは、個体全体が一つの細胞からなる巨大な多核単細胞海藻
■海ぶどうの全ゲノム配列の解読に成功し、単細胞でありながら複雑な形態が生まれる仕組みがわかる
■海ぶどう発生の仕組みがわかることで、養殖時、発育がうまくいかない問題を解決できる

沖縄料理店などで出てくる、緑のプチプチをたくさんつけたブドウのような海藻「海ぶどう」。

実はこの海ぶどう、生物学的には一つの細胞から出来た巨大な単細胞海藻なのです。細胞膜による仕切りがないだけで多くの細胞核をもっていますが、単細胞生物だったとは驚きですね。

そして今回、沖縄科学技術大学院大学(OIST)のポスドク有本飛鳥博士らが、この海ぶどうの全ゲノム配列の解読に成功しました。研究成果は「DNA Research」で発表されています。

A siphonous macroalgal genome suggests convergent functions of homeobox genes in algae and land plants
https://academic.oup.com/dnaresearch/advance-article/doi/10.1093/dnares/dsz002/5419551

海ぶどうは沖縄の特産品で、農家によって養殖もされています。しかし中には原因不明な生育不良の個体があり、農家も「なんでかな〜」と頭を抱えていたそうです。

しかし今回のゲノム決定によって海ぶどうの成長関連遺伝子を比較することが可能になり、問題が解決されるかもしれません。また、害をなす近縁種の蔓延を防ぐ助けにもなるでしょう。

生物学的にも意義あり!海ぶどうゲノム解析の全貌

Credit: academic.oup

研究で調べたのは恩納村漁協で養殖された海ぶどうのゲノムです。解析したゲノム情報は、単細胞藻類、苔の一種、稲やシロイヌナズナといった、すでにゲノムが解読されている植物ゲノムと比較されました。

単細胞でありながら複雑な形を取る海ぶどうは、植物の進化を探る良い材料となります。生物学的にも意味があるんですね。

研究を始めた当初は、海の緑藻のゲノムは1つも明らかになっておらず、どれくらいの遺伝子を持っていて、どのような植物ホルモンで成長が調節されているのかなど、全く不明でした。

しかし解析の結果、海ぶどうの持つ遺伝子セットには、緑色植物の共通祖先がコアとしてもっている遺伝子セットを拡張したものが含まれることがわかりました。

その中には、核輸送を調節している複数の遺伝子も含まれています。核輸送とは、細胞核と細胞質の間で情報のやり取りをする仕組みのことです。遺伝情報は核内にしか存在しないため、遺伝子を利用するためのこの仕組は真核生物においては必須です。

Credit:academic.oup

多細胞生物においては、核輸送の仕組みは、1つの細胞内で限定されて働くことで細胞の性質を決めます。単細胞生物である海ぶどうにおいては、同じような割当が、核単位で起こっているのです。この仕組によって、単細胞生物でありながら、複雑な形態を取ることができます。

また他の緑藻に比べると、海ぶどうはホメオボックスと呼ばれる形態的発生を調節する遺伝子を余計に持っていることもわかりました。ホメオボックスタンパク質は手や足の部品を作る大本になる遺伝子スイッチをオン・オフする働きを持っていて、生物の形態的な特徴をドミノ倒し式遺伝子発現で形成する上流過程に関わっています。

今後研究チームは「海ぶどうの生活サイクルを通して発現される遺伝子を解析したい」とのこと。例えば、陸上の植物では特定のホメオボックス遺伝子は、花粉や卵において高い発現が見られることがわかっています。海ぶどうでも発生の早い段階で働いている可能性があります。

 

こういった研究の成果は、海ぶどうを養殖している沖縄や、太平洋地域の農家にとても貢献できそうですね。そのあかつきには、せっかく沖縄料理店に行ったのに海ぶどうが入荷していない!といった悲劇がなくなり、皆が美味しくプチプチ食感で満たされることでしょう。

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reference: Science Daily / written by SENPAI

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