想定の10倍!? 太陽磁場の正確な測定に初成功!

geoscience 2019/04/02
Credit: Queen’s University Belfast
Point
■太陽磁場が、従来考えられてきたよりも10倍も強いことが判明
■太陽フレアの磁場の強さをかつてないほど正確に計測できた
■オーロラやGPS障害は、太陽フレアが放出したエネルギーやガスが地球に到達し、磁気が乱れるために生じる

ぽかぽか陽気が気持ちいい季節になりましたね。

私たちにとって身近な太陽ですが、地球からは約1億5,000万キロメートルも離れています。

しかしその太陽の磁場が、従来考えられてきたよりも10倍も強いという説が発表されました。太陽磁場とは、太陽内部で生成され、太陽光球面、彩層、コロナ、太陽系内空間へと伸びている磁場(電気的・磁気的現象)のことです。

Mapping the magnetic field of flare coronal loops
https://arxiv.org/abs/1902.07514

大型太陽フレアの噴出の瞬間を見事キャッチ

この説を発表したのは、ウェールズにあるアベリストウィス大学のデイヴィッド・クリッツェ氏ら。地上望遠鏡を用いたコロナ研究の権威である同氏は、クイーンズ大学ベルファストの研究員を務めていた頃に開始した研究を、2017年にアベリストウィス大学に移籍後に完成させました。

コロナとは、太陽表面の外部に大きく広がる電離した高温ガスの層のことです。完全日食の際に「ダイヤモンドリング」として目にすることができます。

Credit: pixabay

2017年9月、クリッツェ氏は、太陽表面で激しい活動が生じている箇所を10日以上にわたって観測しました。用いられたのは、スペイン領カナリア諸島ラ・パルマ島のロケ・デ・ロス・ムチャーチョス天文台に設置された口径1メートルのスウェーデン太陽望遠鏡です。この望遠鏡が一度に撮影できるエリアは、太陽表面のわずか1パーセントでした。

ところが、強運の持ち主のクリッツェ氏。なんと、稀に見る大型の太陽フレア(太陽表面で起きる爆発)を観察することに成功したのです。明るい閃光として生まれた太陽フレアは、太陽大気で蓄積された磁場が急激に放出する際に現れます。ベストなタイミングで、ベストな位置に、たまたまフォーカスしていた時に、噴出の瞬間を見事キャッチするとは…すごすぎます。

偶然にも重なった好条件のおかげで、クリッツェ氏は、太陽フレアの磁場の強さをかつてないほど正確に計測することに成功しました。約140万キロ(地球の109倍以上)の直径を持つ炎が、太陽の表面から数百万キロメートルの高さまで立ち上っていたのです。このことは、太陽の表面付近で起きている現象についての私たちの理解を変えてしまうほどの可能性を秘めています。

太陽の外層大気で起きる現象のすべてを左右するほどの影響力を持つ太陽磁場ですが、その強さや空間特性の正確な測定はこれまでほとんど行われてきませんでした。クリッツェ氏は、この状況を「各地の気温を計測せずに地球の気候を理解しようとすること」に例えています。

磁場の強さや空間特性の測定は太陽コロナの物理の理解に不可欠ですが、磁場に関する情報を含んで地球へ届く弱い信号を捉えるには設備上の限界がありました。その意味で、コロナループの磁場を世界で初めて正確に計測できたことの意義は計り知れません。

オーロラもGPS障害も太陽フレアが原因

今回の研究で報告された磁場の強さは、MRI装置の内部で発生する磁場(約10,000ガウス)のおよそ100分の1で、典型的な冷蔵庫用マグネットの磁場の強さと同等とのこと。とはいえ、太陽表面から巨大な太陽フレアを噴出させるプラズマを閉じ込めてループ構造をつくるほどの威力を持っています。

Credit: pixabay

燃え盛る炎が乱舞する灼熱の世界…。「規模が大きすぎる上に、はるか彼方のよそ事だな〜」と思ったあなた。実は、太陽フレアは地球にも小さからぬ影響をもたらしていまます。

地球の北極や南極で観測されるオーロラを生む正体も、実は太陽フレアです。大爆発で宇宙空間に放出された高エネルギーやガスが地球周辺に到達すると、磁気が乱れるために起きるのです。また、通信衛星やGPSの障害を引き起こすことも。事実、2017年9月にクリッツェ氏が観測した大型太陽フレアは、GPS誤差を最大で約3倍増大させたそうです。

太陽は私たちにとって、遠くて近い存在なのです。

謎だった地球の太陽風に対する「最初の防衛ライン」が明らかに

reference: phys.org / translated & text by まりえってぃ

SHARE

geoscienceの関連記事

RELATED ARTICLE