盲目の人は「色」をどのように考えているのか?

brain 2019/04/28
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Point
■盲目の人は、色の概念と抽象概念をどちらもATL背外側部で処理することが判明■目が見える人は、知覚概念をATL背外側部で、抽象概念をATL内側部で、それぞれ処理する■盲目の人は、色の知覚経験を持たない代わりに、言語を通じて豊かで正確な色の概念を形成する

「赤」と「正義」という単語をそれぞれ思い浮かべてみよう。

この時、私たちの頭の中では異なる処理が行われている。色を表す「赤」という単語は、目の錐状体細胞から出る信号に結びついた知覚経験として理解される。

これに対して、抽象概念である「正義」という単語は、言語を通じて理解される。では、目が見えない人々は、「赤」という見えない概念を一体どうやって理解しているのだろう?

ハーバード大学のアルフォンソ・カラマッツァ氏らが、目が見える人は色の概念(「赤」など)と抽象概念(「正義」など)を異なる脳領域で処理するのに対し、盲目の人は両方を同じ脳領域で処理することを、このほど明らかにした。

論文は雑誌「Nature Communications」に掲載されている。

Neural representation of visual concepts in people born blind
https://www.nature.com/articles/s41467-018-07574-3

抽象概念を司る脳領域で色の概念を理解

研究チームは、生まれつき目が見えない被験者12名と、目が見える被験者14名の脳画像撮影を実施。両者に馴染みがある具象概念(「カップ」など)、盲目の人が知覚できない視覚概念(「赤」や「虹」など)、知覚とは無関係の抽象概念(「自由」や「正義」など)のそれぞれに関連した単語の音声を被験者に聴かせ、その間の脳活動をfMRIで記録した。

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その結果、すべての被験者において、何らかの知覚をともなう具象概念の認識が側頭葉前方部(ATL)内側部で行われるのに対して、単語の意味に基づいて理解され、知覚をともなわない抽象概念の処理はATL背外側部で行われることが明らかになった。

これらに対し、色に関する単語の場合は、目が見える被験者と盲目の被験者で違いが出た。前者ではATL内側部での活発な活動が見られたのに対し、後者ではATL背外側部で活発な活動が行われていたのだ。つまり、目が見えない人は、通常は知覚とは関係のない抽象概念を司る脳領域で、色の概念を理解しているということである。

「正義」を理解するように「赤」を理解!?

「もしあなたが盲目の人と話していて、相手が盲目だと知らなければ、彼らの『赤』という経験が自分の経験と異なるなんて考えもしないでしょう。なぜなら、彼らは実際に『赤』の意味を理解しているからです」と、カラマッツァ氏は説明する。つまり、目が見えない人は、目が見える人が「正義」の意味を理解するのと同じように、「赤」の意味について聞いたり読んだりすることで知るということだ。

目が見えない人は、色の知覚経験を持たない代わりに、言語を通じて色の概念を形成するようだ。しかもそれは、目が見える人が考える以上に、正確かつ豊かなものらしい。

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過去の研究では、目が見えない人が、オレンジ色が、緑や青よりも黄色や赤に近いものだと理解していることが示された。色を、自分が経験する知覚特性とは異なる物体や場面の特性として理解するだけでなく、色同士の違いさえも学ぶことができるというのだから驚きだ。

盲目の人における色の知識に関する従来の研究は、色に関する用語の理解という側面に焦点が当てられてきた。

だがカラマッツァ氏らの研究は、色の概念を処理する脳領域に着目したことで、それらとは一線を画している。言語を通じて何らかの概念を獲得する上で、特定の脳領域がいかに重要な役割を果たしているかが分かる。

 

「視覚や聴覚を持たない人々がこの世界をどう理解しているか?」という疑問は私たちの心を捕えて離さないテーマの1つだが、脳は私たちが考える以上にフレキシブルだ。私たちが感じている世界は、思いの外違わないのかもしれない。

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reference: digest.bps / translated & text by まりえってぃ

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