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ダークマターの正体は「原始ブラックホール」じゃないかもしれない

2021.01.27 Wednesday

2019.04.04 Thursday

Credit: pixabay
Point
■Kavli IPMUの研究によると、ダークマターは原始ブラックホールではない可能性が高まる
■天の川銀河とアンドロメダ銀河の間にある星を観測し、「重力レンズ効果」があるか調査
■およそ1万5000個の明るさを変える星の中、「重力レンズ効果」に当たるのはたった1個しかなかった

「ダークマター」の正体は未知の素粒子かもしれません。

東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構 (Kavli IPMU)は、すばる望遠鏡に搭載された「超広視野主焦点カメラ(HSC)」で得られたアンドロメダ銀河のデータを解析したところ、ダークマターは「原始ブラックホール」ではない可能性が高まったと発表しました。

研究の詳細は、4月1日付けで「Nature Astronomy」に掲載されています。

Microlensing constraints on primordial black holes with Subaru/HSC Andromeda observations
https://www.nature.com/articles/s41550-019-0723-1

「重力レンズ効果」で原子ブラックホールを探索

Credit:subarutelescope

宇宙には、存在する物質のおよそ5倍もの総量に当たるダークマターがあるとされています。もしダークマターがなければ、宇宙の星たちはバラバラに飛んで行ってしまうのです。ダークマターのおかげで星たちはあっちこっちに飛んで行かず、銀河の中にとどめ置かれるわけなんですね。

ただこんな重要な役目を持ちながらも、その正体はいまだによくわかっていません。候補として挙がっているのは「未発見の素粒子」説、それから宇宙が高温・高密度だった初期時代に形成されたかもしれない「原始ブラックホール」説です。

「原始ブラックホール説」は、1970年代にホーキング博士が主張したもので、例えば月の重さ(太陽の2700万分の1)より軽い原始ブラックホールがダークマターである、という可能性はまだ否定されていませんでした。

私たちから約 260 万光年の距離にあるアンドロメダ銀河と天の川銀河の位置関係の概念図 / Credit: Kavli IPMU

そこで、Kavli IPMUの研究チームは、この真相を確かめるためにHSCを使って、天の川銀河とアンドロメダ銀河の間にある星およそ9000万個を同時測定しました。というのも、2つの銀河間にあるダークマターがもし原始ブラックホールであるなら、「重力レンズ効果」によって星の明るさに特徴的な変化が見られるはずだからです。

「重力レンズ効果」とは次のようなもの。

原始ブラックホールがアンドロメダ銀河の手前を横切って、HSCの視線方向にほぼ一直線上に並んだときに起こります。要するに、原始ブラックホールがアンドロメダ銀河の星に近づくと、重力のせいで星は明るく見え、また遠ざかると暗くなるというわけです。

Credit:subarutelescope

下の画像のように、原始ブラックホールが近づくと、星が明るく見えるはずなんですね。アンドロメダ銀河の中心からやや左側に、1つだけ明るくなっている星がそれです。

月の重さ程度の原始ブラックホールの場合、星の明るさの時間変動は、原始ブラックホールの動く速度にしたがって、およそ10分〜数時間にかけて起こるとのこと。これは、自ら明るさを変える変光星に比べて、短い時間変動です。

そして得られたデータを分析してみると、およそ1万5000個の明るさを変える星が発見されました。しかし、この中で重力レンズ効果の候補となる星はたった1個しかありませんでした。

事前の予測では、ダークマターが原始ブラックホールであれば、1000個程度の重力レンズ効果が発見されるはずでした。この1個が原子ブラックホールだとしても、その総量はダークマターの0.1%程度でしかないのです。

この結果から、ダークマターは原子ブラックホールではない可能性がかなり高まったようです。やはりダークマターは未知なる物質であるみたい…一体ナニモノなのでしょうか?

暗黒物質の正体といわれる「アクシオン」を検出可能な測定装置が完成

reference: subarutelescope / written & text by くらのすけ

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