電気で視力が回復!? 切開せず傷も残らない形成手術が開発される

life 2019/04/04
Credit: depositphoto
Point
■微小電極で軟骨組織に電流を流して柔軟にさせ、型にはめて整形するという新しい手術法を開発
■電極を刺すだけなので、患部をメスで開いたり、縫合でくっつけたりする必要がない
■形成手術や視力回復手術などに応用できる

「整形したいけどメスは入れたくない」「近眼を手術で治したいけど角膜を切るのはちょっと」という方に朗報です。

カリフォルニア大学とオクシデンタル大学の研究者たちが、メスを使わず電極と針と3Dプリントした型を使って、軟骨組織などの形を整える手術法を開発しました。研究内容は、アメリカ化学会の国際学会で発表されています。

‘Molecular surgery’ reshapes living tissue with electricity but no incisions – American Chemical Society https://www.acs.org/content/acs/en/pressroom/newsreleases/2019/april/molecular-surgery-reshapes-living-tissue-with-electricity-but-no-incisions.html

暖めなくても柔軟に

研究を行ったブライアン・ウォン博士はもともと、従来の形成手術法の代わりとなる新しい方法の開発を行っていました。その方法は、赤外線レーザーを使って軟骨組織を温め、柔らかくしてから形を整えるという方法です。

しかしその方法はコストがかかる上、組織を破壊することなく軟骨を柔軟になる温度まで温めるのは困難でした。

そこでもっと実用的な方法がないかと探していた博士は、実験的に軟骨を温めるために電流を流したのです。この方法は実際うまくいき、軟骨の形を整えることができました。

しかし一つ奇妙なことが起こりました。電流を流しても、軟骨は温まっていなかったのです。彼はなぜこの方法がうまくいくのかを調べるために、オクシデンタル大学のマイケル・ヒル博士に助けを求めました。

秘密は電荷の濃度

軟骨組織は、コラーゲンと呼ばれる小さな硬繊維が、高分子によってスパゲッティのようにゆるく絡まり合ってできています。一つを持ち上げると周りの麺が絡まって一緒に持ち上がり、全体として柔軟性もあります。

軟骨組織はマイナスに荷電したタンパク質と、プラスに荷電したナトリウムイオンを含んでいます。これらの電荷が濃くなるほど、軟骨組織は固くなり、逆に電荷が薄まれば柔らかくなります。

ヒル博士のグループは、軟骨の電解液に電流を通すと、水が水素イオン(陽子)と酸素イオンに変化することを突き止めました。水素イオンのプラスの電荷が、タンパク質のマイナス電荷を打ち消し、電荷密度を減少させることで柔軟性が増すというわけです。

そしていったんこの状態になった軟骨組織は、型にはめることで整形できます。

ロップイヤーウサギの耳も、あら不思議…

Credit: Rachel Qu, Anna Stokolosa, Charlotte Cullip

研究者たちがこの実験に使ったのは、ウサギの耳。まっすぐ立ったウサギの耳を、型にはめて形を変えようと試みました。

電流を通さない場合は、型を外すとウサギの耳は元通りにまっすぐ立ってしまいます。しかし、微小電極針を耳の曲げたい部分に通して電流のパルスを流して柔軟にし、型にはめるとあら不思議…損傷を与えることなく耳が曲がりました。

そしてその後、電流を切って軟骨組織を固くすることで、型を外しても曲がった状態のまま保つことに成功しました。

研究者たちはこの方法を視力回復手術に適用するための研究も行っています。角膜もコラーゲンで出来ているため、この方法が使えます。今のところ動物実験では有望な結果が出ているようです。

人間に適用するとすれば、3Dプリントしたコンタクトレンズに電極をプリントして目に装着し電流を流します。電流が角膜を一時的に柔軟にすることで、曲率を変化させて視力が回復する…というわけです。

 

形成外科や眼科での手術を一変させる革新的な方法が開発されました。大掛かりな機材も必要なく、麻酔は部分麻酔で十分です。何より、メスを入れたり縫合したりしなくても手術できるんです。まさに夢の手術法といえるのではないでしょうか。

眼からレーザーを放出できるコンタクトレンズを開発

reference: Science Daily / written by SENPAI

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